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第208回 2013年7月22日放送

肝心(ちむぐくる)が、心の旅を生む バスガイド・崎原真弓



肝心(ちむぐくる)で、もてなす

バスガイド歴30年、客から圧倒的な支持を集める崎原のツアーは、多彩な出し物にあふれている。バスから見える車窓に合わせて沖縄の歴史や文化を詳しく案内するのはもちろんのこと、歌や踊り、さらに琉球空手の演武までを織り交ぜ、忘れられない思い出を残す。なぜここまでするのか? その裏には、崎原が日々、心に刻む流儀「肝心(ちむぐくる)で、もてなす」という思いがある。
「ちむぐくる」とは、体の奥深くからわき出る、相手を思いやる心。崎原は、出会った人に少しでも楽しい時間を過ごしてもらうために、全力を注ぐ。
「ちむぐくる。一生懸命であったり、それから気配り、目配り、心配り。そういう深い思いで持って、この心は、もうこれ以上膨らみませんよっていうくらいのおもてなしをしていく案内していく。」
縁があって出会った人には、最高の思いをしてもらいたい、その思いが崎原のツアーを支えている。

写真小学生から習ってきた琉球舞踊で乗客をもてなす


心で、心を伝える

沖縄でバスガイドをする上では、避けることのできない仕事がある。68年前の戦争を伝えることだ。
これまで崎原は、知識以上のものを伝えようと試行錯誤を重ねてきた。例えば沖縄戦の話では、自ら聞き取った体験者の証言を、おばあの口調を真似て、1人語りで話す。崎原が伝えたいのは、目に映る風景の奥にある、そこにいた人々の「思い」。見えないものを伝えることにこそ、ガイドの使命があると崎原は考える。
「戦争の歴史そのものを語るのではなくて。生身の人間が、人として自分の身に置き換えて、心で見えないそこにいた人たちの思いを、感じ取って欲しいって思うんですね。少しでもいいから、感じ取って欲しい。」

写真沖縄戦を生き抜いた“おばあ”から生の声を聴く
写真“おばあ”の「思い」を、1人語りで伝える


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

一番大切なのは、心なんだと思います。全ての人たちに感謝の気持ちを持って、真心をこめておもてなしをする。それがプロフェッショナルだと思います。

バスガイド 崎原真弓


The Professional's Skills(プロフェッショナルの技)

沖縄を選んでくれたからこそ

心が通い合うと言われる崎原のガイド。その特徴は、あらゆる客に対応できる多彩な技にある。
バスの中で披露するのは、小さい頃から習ってきた得意の舞踊をはじめ、沖縄の幅広い民謡やポップス、そして手話を交えた歌まで。さらには琉球空手の演武も、7年間道場で習ってきた本格的なものだ。少しでも本物の沖縄を伝えようと、全て専門家に教えを請い、その鍛錬に人生を捧げてきた。
こうした技をより効果的に見せるため、乗車前の準備は緻密を極める。ルート上の目印を合図に、どこで何の説明を始めるか、構成を分刻みで立てていく。
「ほかの県に行くお客さんもいますよね。だけれども、せっかく沖縄を選んで下さったんだから、できる限りのことをやってあげたいなっていう気持ちになると思うんです。」

写真琉球空手の演舞、7年前から道場に通い黒帯の腕前
写真案内がない日は、コースを試走 分単位の構成を練る