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これまでの放送

第204回 2013年6月10日放送

縁で生きる、感謝でもてなす 居酒屋店主・中村重男



酒×料理

選りすぐりの酒と、素材にこだわった料理で、数々の文化人や一流シェフを魅了する居酒屋店主・中村重男(55)。居酒屋は元来「酒屋」であることから、中村はとことん日本酒との相性を考え抜いた料理作りにこだわっている。
定番メニューのひとつ「活毛ガニ」。さっぱりとした土佐酢のジュレをかけ、さわやかな日本酒の風味を引き立てる。濃厚な甘酢餡(あん)と山椒(さんしょう)をかけた「野菜のあんかけ」は、日本酒のコクをさらに味わい深くする。使う調味料も、日本酒に合うよう厳選されたものばかりだ。「酒だけでも無理、料理だけでも無理、その両方をうまく生かすことで極上の居酒屋料理が完成する」と、中村は語る。

写真酒と料理で極上の居心地を生み出す、居酒屋店主・中村重男
写真看板メニュー(1) 活毛ガニのジュレ添え
写真看板メニュー(2) うまい野菜の山椒あんかけ
写真熟す前のみかんを搾った調味料「みかん酢」


縁で、仕事をする

中村は店が休みになると、全国の農家や酒蔵へ足を運ぶ。旬の食材や酒の出来を確かめ、新メニューを作るためだ。仕入れの際にこだわるのは、必ず生産者と直接会い、食材への思いを聞くこと。生産者の思いを背負い、それを料理にして客に伝えることが自らの原動力だという。そのためにはどんな手間も苦労も惜しまない中村。「縁で仕事をしたい」と、北海道から沖縄まで、およそ100件の農家や酒蔵とつきあいを保っている。

写真
写真農家を訪ねる中村 縁を大切にする


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

愚直なまでにやり続けることが、プロフェッショナルではないかなと思うんですけど。やっぱりね、こつこつとお客様のことを考えながらやり続けることが、プロじゃないかなと思いますね。

居酒屋店主 中村重男


プロフェッショナルのこだわり

同じ日本酒でも、よりおいしい秘密

全国から選りすぐりの日本酒を仕入れている中村。しかし同じ銘柄の日本酒でも、「中村の店で呑(の)むと、よりおいしい」と多くの客が言う。
その秘密は、酒の熟成期間にある。中村は、仕込みの合間や営業後など、隙を見ては頻繁に利き酒を行う。日本酒は空気に触れると熟成が進むが、その具合は千差万別。おいしくなるものもあるが劣化することも多い。中村は利き酒によってその酒の特徴を掴み、熟成具合を見極める。そしてその酒が最もおいしくなるタイミングを読み、客に出すのだ。

写真頻繁に、利き酒を行う


放送されなかった流儀

満足感の先の、“感動”を生み出す

居酒屋ひと筋に生きる中村には、いまだ目指し続ける境地がある。それは、『単においしかったという“満足”ではなく、その先にある“感動”を生み出す』ことだ。さまざまな客に対してそれぞれのもてなしを心がける中村だが、感動が生まれる至高の境地まで導くのは、極めて難しいと語る。そのためには、料理と酒を出す順番を客ごとに変え、店のスタッフの連携、料理を出すテンポ感、ひとつひとつが欠かせない。そうした事を実現するために、スタッフの教育にも力を入れる中村に気の休まるときは無い。

写真
写真ただ愚直に、高みを目指し続ける