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第197回 2013年4月15日放送

不屈の商魂、中国に生きる 小売り経営・三枝富博



脱皮しない蛇は、死ぬ

三枝が拠点を構える四川省成都市は、中国随一の経済発展を遂げている街だ。
人口は東京を上回る1400万人。今後5年の内に巨大なショッピングモールが100か所作られる計画で、世界の有力企業が次々進出、しのぎを削っている。この激烈な競争を生き抜く心構えを、三枝は「脱皮しない蛇は、死ぬ」と表現する。
中国人社員からあがってくる新たな事業やサービス、商品の提案は成功の確率が5割あると思えば、どんどんチャレンジさせる。今、業績が順調に伸びている店舗であっても、さらなる飛躍のために積極的に投資を行い、店の改装をするなど売り場を生まれ変わらせる。もちろん失敗するリスクもあるが「立ち止まる方が、はるかにリスクが大きい」と三枝は言う。客の嗜好(しこう)も、市場の流行もすさまじいスピードで変わる中国。3年、5年先を見据えたとき、他にはない特色を出さなければ生き残れないという危機感が、三枝を駆り立てている。

写真常に「過去最高の自分に挑戦する」ことを掲げて、走り続けてきた
写真 写真
他店にない独自のサービスが、現場から次々に生まれている


この街で生きる、その覚悟はあるのか?

外国企業が異国の地に根を張り、地域からの信頼を勝ち取って成功をおさめるのは簡単ではない。たとえば安心安全な商品、上質のサービスなどでアピールすることも大事だが、それ以上に三枝が大切に思い、胸に刻んでいるのが「この街で生きる覚悟」だ。
三枝も中国に渡った当初は、3年ほどで成功して日本に帰るつもりだった。だが、自分の仕入れた商品が売れず、赤字が続く中で次第に考えが変わっていった。「最初はどうやったら売上げがあげるのかだけを考えていた。でも、そうじゃなくてここに住む人たちの考え方や何をどうして欲しいのかを知るのが大事なのかなと。それを知ることが出来れば、先に進める」。街の暮らしを徹底的に調べようと1000軒以上の家を訪ね、時間をかけて地域に支持される店作りを目指してきた。
三枝は、2008年の四川大地震の時、地震の翌日から店をあけるとすぐに決断した。繰り返される反日デモの時も「地域のために何が出来るかを考えよう」と従業員に訴え続けた。異国の地で商売をしていれば、困難は必ず訪れる。だが三枝は、何があってもこの街から逃げようとは思わないという。自分たちに何が出来るのかを考え、動き、その積み重ねが地域からの信頼につながる。三枝はそう信じている。

写真写真異国での商売には逆境もある。それでも三枝の覚悟は揺るがない。
写真時々、妻の手料理が食べたくなるが、中国の暮らしはまだ続きそうだ。


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

どんな環境にあっても目標に向かって、自分の心の炎を燃やし続けて、あきず、あきらめず、一隅を照らすことが出来る人だと思います。そして、周囲の人や仲間たちの成長に本当に素直に心から喜べる人だと思います。

小売り経営 三枝富博


放送されなかった流儀

一人の百歩より、百人の一歩

三枝は、一人のリーダーが組織を引っ張るよりも、社員一人一人が同じ方向を向いて一歩ずつ進んでいくような組織を作りたいと考えている。三枝は大きな方向性を示し、あとは社員自らが考え、動いて欲しい。16年かけて築いてきた社員との信頼関係は、まるで家族のように強くなっている。

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写真「百人の一歩」の心で、中国市場に挑み続ける