樂には、茶碗(ちゃわん)の制作を行う際の、一つのルールがある。前衛的な茶碗を作るとき、必ず同時に、樂家代々が作ってきた伝統的な樂茶碗も作るという。そこには、伝統を継承するという「場所」から、新たな地平に挑み続けてきた樂ならではの哲学が包含されている。
「伝統だとか、歴史だとかそういうものに逆らわないで、それをきちっと背負って、自分なりの仕事をしようっていう。そういう仕事を一方でしていて、時々『ガンと壁をぶち破ってしまって向こう側に出てしまいたい』っていう、強い反動みたいなものがあって。そのエネルギーがたまっていくと、本当にバンって爆発する。振り子のようにジグザグに歩いて行こう、っていうのが僕のスタイルというのかな。」
前衛的なスタイルのみを繰り返していると、さらに新たなスタイルへと挑み、跳躍しようとするパワーが次第に得にくくなる。樂は、その課題を『一度伝統に立ち返る』という方法で乗り越えるのだ。