

この20年で、崩壊したクラスを次々と立て直してきた小学校教師・菊池省三。クラスを再生させるとき、菊池が大事にしているのが、「自信が人を伸ばす」という流儀だ。
「自信がないから、友達をいじめたり、教師に反抗的になる」と言う菊池。「自信」を持たせることこそが、学級崩壊やいじめをなくす秘けつだと考えている。
そのため、菊池は子どもたちを褒めることにこだわる。何気ない仕草やちょっとした表情など、ささいな事までも、きちんと褒める。また、教師が褒めるだけではなく、子ども同士でも褒め合う機会を毎日設け、自分の良さや友達の良さに気づかせる工夫を重ねている。
菊池学級・ディベート大会
大人顔負けの白熱した議論が繰り広げられることもある

啐(そつ)とは、ひな鳥が卵から出ようとして殻を破る音。啄(たく)とは、親鳥が助けようと外側から殻をつつく音。卵が無事にかえるには、両者のタイミングが合わなければならない、という意味だ。子どもの中に“変わりたい”“伸びたい”という気持ちが芽生えた時に、背中を押す。勝負の時はいつか?作文やふだんの仕草、友達との会話などあらゆるシーンから、菊池は子どもの状態を探る。絶妙なタイミングで、子どもに働きかける。そうすれば、子どもたちは一気に伸びるという。
ふだんは厳格な菊池だが、子どもたちの話に思わず笑いがこぼれる

菊池が事あるごとに、子どもたちに伝えているメッセージ。
面倒なことや苦しいことからは、つい目をそらして逃げたくなる。しかし、その壁を乗り越えてこそ、人は成長できる。全力で課題に立ち向かい、突破できたとき、そこには新しい世界が広がっている。今までとは違う自分になれる、と菊池は教えている。
社会に出ると、困難なことに多く遭遇するだろう。それでも勇気を出して、立ち向かっていく人に育ってほしいと菊池は願っている。
教壇に立ち続けて30年、多くの子どもたちを育ててきた菊池
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良いクラスの条件は?という問いに、菊池が答える言葉。個人の意志がなく、単に友達とつるんでいるのを「群れ」。一人ひとりが意志を持ち、自ら考え、行動する。さらに仲間を思いやる気持ちも持つ。そんな姿を「集団」と表現している。クラスが「集団」になったとき、子どもたち一人ひとりの個性が輝き出すと菊池は言う。いま担任している6年1組33名も、よりよい集団を目指して日々、進化しつづけていく。
菊池学級では、子どもたちは競うようにして自らの考えを発表するようになる