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これまでの放送

第189回 2012年5月7日放送

人生を立て直し、希望を探す 自殺防止・藤藪庸一



最後のSOSに、向き合う

藤藪が行う自殺防止の活動の拠点は、和歌山県白浜町にある教会。この町にある断崖には、飛び降り自殺を考える人が訪れる。藤藪の仕事は、この断崖の近くに設置された公衆電話からのSOSの声に応え、保護することから始まる。そして、話を聞き、悩みを解決する道を共に探す。また、お金や身寄りがなく、帰る場所を持たない人には、教会で共同生活を送ってもらいながら、自立できるまで支える。自殺を思いとどまらせるだけでなく、再び社会で生きていけるよう基盤を整えるところまで支援する藤藪の取り組みは、国や自治体からも高い評価を得ている。

※なお、自殺に関するさまざまな問い合わせの窓口は、全国の自治体に設置されています。
各都道府県庁、市町村、保健所にある「心の健康相談」担当部署にお問い合わせ下さい。

写真助けを求める電話の対応は24時間体制だ


まずは、100%信じて聞く

さまざまな理由から思い悩み、自殺を考える人々。彼らが背負ってきたものは、複雑な事情が絡んでいることが少なくない。藤藪は、その悩みを受け止める者として、まずは相手の話すことを100%信じて聞くことを大切にしている。相手の悩みを一緒に解決していくためには、強い信頼関係を築かなければならない。会って間もないうちに、相手のことを疑ってしまえば、相手は心を閉ざしてしまう。しかももし相手が話していることが本当であれば、取り返しのつかないことになる。藤藪は、時間をかけて相手との信頼関係を築き、悩みを解決する道を探っていく。

写真この日、一人の男性の生活拠点を藤藪のもとに移すため、引っ越しを手伝った


何があろうとも、生涯 寄り添う

藤藪は、この仕事に臨むにあたり、一つの信念を心に刻む。それは、「何があろうとも、生涯 寄り添う」ことだ。例えば藤藪の元で共同生活を行い自立を目指そうとしても、年齢などが理由で、なかなか就職できない人もいる。あるいは、いったん藤藪の元を離れ社会復帰を果たしても、何かのきっかけで再び自殺を考えるようになる人もいる。こうした人たちに対し、藤藪は、いつでも、いつまでも自分が支える覚悟があることを必ず伝えている。「頼れる人がいる」―そう思えることが、思い悩む人の心をきっと支えると考えている。

写真共同生活を送る人にあえて厳しく対応することもある


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

自分のダメなとこ、足りないところは、本当に分かった時に、それをちゃんと、認めて、それでもあきらめないで、次にまた、向かっていく、また成長していこうとする人、そういう人だと思いますね。

自殺防止 藤藪庸一


放送されなかった流儀

自分の価値観はまげない

自殺を考えた人の悩みに寄り添い、支える藤藪だが、この仕事を続ける上でもう一つ大切にしているのが、「自分の価値観は曲げない」ということだ。ある人が生きづらさを感じるのは、実は、その人自身の考え方が原因の場合もある。そうした場合、そのことを黙認してしまうのは、結果的にはその人のためにならない。そこで藤藪は、「あなたの考えは分かった。でも、僕はこうした方がいいと思う」と、必ず自分の価値観に即した意見を相手に伝えるようにしている。それは、この仕事をする上で大切なことだと、藤藪は考える。