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これまでの放送

プロフェッショナル特別編 2012年4月2日放送

プロの神髄はこだわりにあり



数秒の違いも許さない・・・杜氏 農口尚彦

“日本酒の神”と呼ばれる杜氏(とうじ)・農口尚彦。そのこだわりは、数秒の違いも許さない妥協なき姿勢にある。酒の原料である米を洗うとき、農口は米を水につける時間を毎回変え、タイマーをにらんでは秒単位ではかる。職人たちは農口の号令に合わせて蔵を走り回る。
農口のそのこだわりは、実は長年続いているものだ。その日の気温や米を水につけた時間、その際の吸水率などを細かくノートに書き留めることを30年以上続けてきた。
その結果が、農口の酒造りに如実に表れている。

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小さな違いを積み重ねる・・・パン職人 成瀬正

日本屈指のパン職人・成瀬正は、いつも厨房で不満な顔ばかりしている。どんな時も出来に満足せず、パンの作り方を真摯(しんし)に研究してきた。
成瀬の店の一番人気はクロワッサン。27の層が作り出すそのクロワッサンで成瀬がこだわるのが食感。クロワッサンの角をつぶさない工夫や、一度巻いた生地をいったん緩め、再び巻く技術、そしてつやを出すための卵の塗り方にまで気を配る。
一つ一つは小さなことでも積み重なると、最後には大きな差が出る。それが成瀬のこだわりだ。

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こだわって、こだわって、そのこだわりを消す・・・数寄屋大工 齋藤光義

京都迎賓館や茶室など、数々の名建築に携わってきた数寄屋大工棟梁(とうりょう)、齋藤光義。
柱の位置や木材、さらには光の差し込む角度まで、齋藤の作る建物はまさにこだわりの結晶。だが、齋藤が最もこだわるのは、そのこだわりを見せないようにすることだ。
「なぶっても(作業をしても)、なぶっていない(作業をしていない)かのように、しゃきっと仕上げる。」齋藤の美学がこの言葉に表れている。

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自分を消す・・・デザイナー 佐藤卓

日本一売れているガムや牛乳など、パッケージデザインを多く手がける売れっ子デザイナー・佐藤卓。決して見た目のインパクトがあるわけではないのに、誰もが何気なく手に取ってしまうには一つの秘密がある。それは“自分を消し”商品の本質を突き詰めて考えることだ。
佐藤は語る。「デザインは主役ではない。気づかれなくてもよい」。
その信念が、人々の生活に寄り添い、過度の主張をしない優れたデザインにつながっている。

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走り続ける、挑み続ける・・・料理家 栗原はるみ

4000種以上ものレシピを生み出し、圧倒的な支持を集める料理家・栗原はるみ。
「100人が作ったら100人がおいしく作れるレシピ」を目指して、日々試作を続けている。そんな栗原が大切にしているのは、現状に満足せず、つねに新たなことに挑戦しつづけることだ。
震災後、栗原はある挑戦を始めていた。それは乾物を中心に使った料理。買い置きができる食材である上、ぜいたくをしない今の時代にあった食材だと考えている。
栗原は、若い人々が作りたくなるよう、伝統にはとらわれない新しい料理法で乾物を魅力的なメニューに続々と仕上げていく。
栗原は語る。「何か良いものを残したいなと…仕事をしているからにはね。それには、今まで誰もやってこなかったことにチャレンジしたい。」

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森は海の恋人・・・カキ養殖 畠山重篤

気仙沼でカキの養殖を長年行い、地元の名産品にまで押し上げた畠山重篤。そのカキ作りへの強い思いは「森は海の恋人」という畠山のこだわりに凝縮されている。
昭和40年代、気仙沼湾には赤潮が発生するなど、一時はカキに深刻な被害がでた。そのころから、畠山は山に木を植え始める。はげ山に木を植えることで、山から海へと流れ込む栄養分を増やし、カキが育つ環境作りを行う運動だ。その輪は年を追うごとに広がりをみせ、カキ養殖は復活を果たす。決してあきらめない、その一貫したこだわりが実を結んだのだ。
そして今、東日本大震災による大津波で、畠山のカキ養殖は壊滅状態となった。
厳しい闘いを再び強いられた畠山。その復活への姿も紹介する。

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