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第194回 2012年3月12日放送

輝く瞬間を、重ねる 小児看護専門看護師・長田暁子



思いをつなぐ人

子どもの看護に関して、高度な知識と卓越した技術を備えた「小児看護専門看護師」。
全国で70人あまりが活躍するが、長田はそのパイオニアの一人だ。治療の難しい病気や重い障害を抱える子どもとその家族の悩みに向き合う日々の中で、長田が大切にしているのは、「思いをつなぐ」ことだ。長田は子どもや親の悩みを聞くと、専門看護師として備えている医療、福祉、教育などの知識を駆使して、ほかの病院の医師や地域の訪問看護師、時には学校や児童相談所の職員などと調整を行い、問題の解決にあたっていく。
子どもや家族の思いを自分1人だけで受け止めるのではなく、多くの人につなぎ、みなで知恵を出し合うことでよりよいケアが生まれると考えている。

写真時に学校や児童相談所などとも連携して問題を解決する


輝く瞬間を、重ねる

長田がケアの中で常に自分の胸に問いかけることがある。それは、どうすれば「子どもと家族の輝く瞬間を重ねられるか」ということだ。つらく長い闘病生活の中では、子どもだけでなくその家族も悩み苦しむことは少なくない。だが、どれほど苦しい状況にあっても、心の底から嬉(うれ)しそうな、きらきらした表情を見せる瞬間があるという。
「本当に些細(ささい)な、嬉しいこととか、穏やかな時間とか、安心できる瞬間とかを見つけたい」。こうした瞬間が支えとなり、子どもも家族も少しずつ前を向いて歩いて行ける、と長田は信じている。

写真子どもと家族の一瞬のきらめきを見逃さない


変わらぬ思いを、すくいとる

1月。長田は、長い期間関わってきた子どもと家族のケアにあたっていた。
染色体の異常で生まれた男の子。1歳まで生きられないと言われていたが、懸命の治療とケアによって1歳半まで成長していた。この日、病院を訪れた両親は医師に重大な決断を伝えた。2週間後に予定されていた手術をやめたい、という。手術では呼吸停止になるリスクもあり、ようやく得られた家族の幸せな時間が万に一つでも失われるのは怖いと、両親は揺れていたのだ。迷う両親の心をどう支えていくのか。長田は、両親が医師に対して変わらず言い続けていた言葉を思い返しながら、医師との調整にあたった。

写真揺れ動く子どもや家族の思いに寄り添い続ける


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

何が起こっているのか。それは何なのかという物事の本質を見極めて、よりよいものを追求し続ける人。そして、そのことによって人々を幸せにすることができる人

小児看護専門看護師 長田暁子


The Professional's Skills(プロフェッショナルの技)

治療や検査、注射を嫌がる子どもは多い。そんなとき、長田は理論に裏打ちされた“技”で対応する。注射を怖がる小さな子どもには、シールを複数枚用意する。幼い子どもはされるがままの状態に強い不安を感じるため、シールを自分で選ばせ、安心感を与えるのだ。
さらに、検査や手術の前には医療用の特製おもちゃを使って、これから起こることを説明し、不安を軽減する工夫も行う。

写真写真小児看護の技を駆使して子どもの不安を取り除く