先が見えない不況の中で、苦戦を強いられている、日本のものづくりの現場。そんな中で、竹内が目指しているのが、「発信する町工場」という姿だ。従業員10名程度の小さな工場ながら、大手メーカーからの下請け仕事に頼らず、独自製品を開発・発信することにこだわっている。
竹内の工場は、元来、プラスチック部品を成形するのに必要な「金型」を作るのが本業だ。金型工場の多くは、大手メーカーからのオーダーを受けて金型を納めている。だが、竹内の工場は違う。独自のアイデアで大胆に改良した金型を考案し、メーカーに逆提案している。その上、17年もの歳月をかけて、加工機械までも独力で考案した。「超小型射出成形機」と呼ばれるその装置は、世界最小クラス。それまで工場の巨大なラインが必要だったプラスチック成形を、卓上で行なうことを可能にし、業界のどぎもを抜いた。
ものづくりに打ち込んできた経験と知恵を生かせば、町工場ほど独自開発に向いている業態はないと竹内は言い切る。自ら発想して製品企画を立て、予算をつぎ込み、オリジナルの商品を開発、それを大手メーカーに売り込むことで、新たな市場を開拓していく、それが竹内の目指す姿だ。