苦戦が続く百貨店業界の中で、内山が1年ほど前にリニューアルしたデパ地下は2割近く売り上げを伸ばした。その背景にはデパ地下の常識を覆す、内山の試みがある。
例えば、総菜や弁当を作る厨房は、地下三階に移設した。今まで厨房は、売り場の横に設置するのが常識だった。それが客を引きつけると言われてきたからだ。しかし内山は、売り場に併設した厨房は客の視界をさえぎり、買い回りを邪魔すると判断した。厨房のほとんどを地下三階に移設し、テナントの数を1.5倍に増やすと共に、売り場の見通しをよくした。
苦戦が続く百貨店業界の中で、内山が1年ほど前にリニューアルしたデパ地下は2割近く売り上げを伸ばした。その背景にはデパ地下の常識を覆す、内山の試みがある。
例えば、総菜や弁当を作る厨房は、地下三階に移設した。今まで厨房は、売り場の横に設置するのが常識だった。それが客を引きつけると言われてきたからだ。しかし内山は、売り場に併設した厨房は客の視界をさえぎり、買い回りを邪魔すると判断した。厨房のほとんどを地下三階に移設し、テナントの数を1.5倍に増やすと共に、売り場の見通しをよくした。
売り場を見回る内山
内山の仕事は多岐にわたる。売り場にどのようなテナントに出てもらうのか、テナントをフロアのどこに配置するのか、そしてどんな商品を売っていくのかにまで口を出す。さまざまなプロジェクトが同時進行で進んでいく多忙な毎日だが、内山はひとつひとつの仕事に徹底的にこだわりぬく。
バレンタインチョコレートの企画会議では、商品カタログの撮影があと6日と迫る中で、パティシエに新しい商品の開発を依頼した。食品部門のトップである内山は、誰よりも前のめりに仕事にうちこむ。「これはこれでもいいかな」と妥協しそうになる瞬間は、日々の仕事で多く訪れる。しかしそこで妥協しないことこそが、仕事を成功に導く秘けつだと内山は語る。
商品開発会議にのぞむ内山
内山はこの冬、一大プロジェクトに挑んでいた。駅の構内につながっておらず、近隣にライバル店の巨大な売り場が控え苦戦する、渋谷店の大リニューアルだ。
内山が取り組んだのは渋谷オリジナルの商品開発に加えて、それを売り込んでいく販売員たちの改革だ。今まで百貨店は、販売戦略を、入っているテナントに任せることが多かった。しかし内山は、渋谷の販売責任者を始めとする販売チームと打ち合わせを重ね、よりテナントの中に深く入り込み、“共に商品を売っていく姿勢”を植え付けようとした。
売り場は商品が並ぶだけでなく、そこに販売員たちの魂が込められなければ成功しない。それが内山の考えるデパ地下改革だ。
フロアの床磨きをする内山
リニューアルの陣頭指揮にたつ内山
内山の仕事は、テナントの経営者、テナントの従業員、部下の社員、パートタイマーに至るまでさまざまな人とかかわる仕事。内山の武器は、そうした人たちをその気にさせるコミュニケーション力だ。
内山が、各地の名店をコラボし開発する、百貨店オリジナル商品。老舗(しにせ)の経営者たちを相手にするときに大切にするのは、“刺激”。専門家ではかえって気づかないようなアイデアを出し、気持ちに火を付ける。今回提案したのは「ぐじの昆布締め」。今まで焼いて食べるのがほとんどだったぐじを、味が濃く、昆布締めに向きにくいとされてきた「利尻昆布」でしめる。刺激的なこの提案に老舗の経営者たちが興味を示した。
さらに部下とのコミュニケーションでも大切にするのも、“刺激”。ダメを出すときは、本気でダメをだし、うまくいったときには全力で褒める。
「何においても、自分の情熱をぶつけることが大切。それによって人が動き出す。」それが内山の持論だ。
老舗経営者と打ち合わせをする内山
部下に語りかける内山
内山は目指すデパ地下の理想像を、「お客様が、新たに“食の発見”をできる宝島」と表現する。宝島であるためには、今まで見たことの無いような商品を生み出すことが大切。
内山はすでに売れているテナントを呼び込むだけでなく、これからブームを起こすだろうテナントや、新しいジャンルの商品を開発し、しかけていくことを大切だと考えている。「お客様にとって想定外の感動を売りたい」と話す内山。終わりなき食の戦いに日々挑んでいる。
商品開発のため地方を飛び回る内山