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これまでの放送

第194回 2011年1月24日放送

涙も笑いも、力になる 院内学級教師・副島賢和



子どもの心を、解きほぐす

院内学級とは、病気やけがなどが理由で学校に通えない子どもたちのために、病院の中で授業を行う施設だ。副島は、ここで勉強を教えると同時に、一つのことを大切にしている。子どもたちの不安や心配を解きほぐすことだ。
病気の子どもたちの中には、病気になった自分を責めたり、否定的になってしまう子が多いと副島は言う。自分の看病のために走り回る両親や兄弟を見て、自分が迷惑をかけていると思い悩んでしまうのだ。副島は、そんな子どもたちの心を察知し、「もっと自分を大切にしていいよ」というメッセージを送り続ける。

写真子どもの体調や表情に気をつけながら、優しく授業をすすめる


子どもを、下から持ち上げる

病気の不安を受けて、縮こまりがちな子どもたちの心。副島は、それを解きほぐす名人だ。その極意を、副島は、「下から子どもを持ち上げる」と表現する。
副島は、ふだんから、わざとドジを踏んだり、受けないダジャレを連発したりする。そうすることで、子どもたちに『自分も失敗していいんだ』というメッセージを送るのだ。
そして、子供たちを前向きにさせるため、副島が大切にしているのが「笑い」だ。手品道具やバルーンアート、ピエロのような赤鼻など、さまざまな道具も駆使して、副島は子どもを驚かせる。大きな声で笑うことで元気を出し、子どもに「自分が主役」だと知って欲しい、それが副島の願いだ。

写真子どもを伸びやかに育てる、教師の極意


そうっと、そばにいる

11月、手術を前に、不安に揺れる少女が教室にやって来た。少女は、日ごろの笑顔が陰を潜め、授業に身が入らない様子だった。副島は、何とか不安を支えられないかと考えていた。
これまで、つらい手術や苦しい治療に臨む子どもを、たくさん見てきた副島。最も大切にするのが、「そうっと、そばにいる」という姿勢だ。近すぎず、遠すぎず、相手が必要とした時にちゃんとそばにいてあげる。そんな距離感で子どもたちと触れあうことを目指している。
副島は、不安に揺れる少女を勇気づけるために、手術当日の朝早く、病室を訪ねた。何かを話したわけではない。ただしばらく、一緒に漫画を読んで、副島はそっと退室した。

写真無事に手術を乗り切った少女を見て、ひとり、安どのため息をこぼした


宮崎 涼くんの詩

ぼくは幸せ

お家にいられれば幸せ
ごはんが食べられれば幸せ
空がきれいだと幸せ

みんなが幸せと思わないことも
幸せに思えるから

ぼくのまわりには
幸せがいっぱいあるんだよ

写真


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

そこにいること、在ることの大切さを知っている人。あたりまえのことを、あたりまえに行える人。目に見えないものも、しっかり受け止めることができる人だと思います

院内学級教師 副島賢和


放送されなかった流儀

心を、“ちょいちょい”する

教室に初めて来た子どもの多くは、緊張や警戒心で、なかなかリラックスした姿を見せない。そんな時、副島は、「心を“ちょいちょい”」する。子どもの様子を、じっくり観察した上で、何に興味があるか、どんなことが得意かを見極め、さりげなく関連の行動を仕掛ける。教材や工作・玩具を吟味し、さりげなく手に取らせることが多い。関心をみせたら、しめたもの。得意なモノに、子どもたちが熱中するよう仕掛け、いつの間にか不安を取り除いてしまうのだ。

写真赤い鼻を付けたピエロのような装いで、子どもの心に入り込む副島