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これまでの放送

第161回 2010年12月6日放送

自分にしかできない、仕事がある 社会起業家・渡邊智恵子



弱みは、“個性”になる

渡邊は、社会問題の解決と利益を上げるビジネスの両立を目的とした「ソーシャルビジネス」の日本におけるパイオニアの1人だ。20年前から、農薬や化学肥料を使わないオーガニックコットンのビジネスを手がけ、農薬による土壌汚染などの環境問題の解決を目指してきた。栽培に手間のかかるオーガニックコットンは、通常、生産コストが高くつく。
それをどうやって継続的なビジネスとして成立させるか。渡邊は、生産コストが高いという“弱み”を、メイドインジャパンのもの作りにこだわることで、品質の良い高級品という“個性”に変えてきた。弱さだけを見て悲観するのではなく、きらりと光る個性を引き出せないか。渡邊は、そうした発想で逆境を跳ね返し、ソーシャルビジネスを成立させてきた。

写真環境問題の解決とビジネスの両立を目指し続けてきた20年


自分は、何のために働くのか

ソーシャルビジネスの世界に飛び込み20年。渡邊は、メイドインジャパンのもの作りにこだわってきた。高度な技術を持っていながら、アジアの安い繊維産業に押され苦境に立たされている国内の工場。そうした工場を守りたいと、全国140の工場と提携をしている。しかし、渡邊の思いを揺るがす事態が起きた。売り上げの1割を占めてきた韓国市場の売り上げが、激減したのだ。かつては、競争相手の少なかった韓国市場。しかし、今は韓国製のオーガニックコットン商品があふれ、価格も格段に安い。渡邊は決断を迫られた。こだわってきたメイドインジャパンをあきらめ価格競争を挑むか、あえてメイドインジャパンの品質にこだわり続けるか。こうした苦境に立たされた時、渡邊は「自分は、何のために働くのか」を問い直す。メイドインジャパンにこだわることを決めた渡邊。厳しいビジネスの世界を1歩1歩進んでいく。

写真苦境に立たされている国内の繊維工場と手を組み、高品質の商品開発で世界に挑む


同じ夢を、追いかけませんか

9月、一つのプロジェクトが大事な局面を迎えていた。その舞台はカンボジア。
内戦の影響で国土のいたるところに地雷が埋められ、復興の障害となってきた。
ある村で日本のNPOなどの活動により、地雷原だった4ヘクタールの土地がオーガニックコットンの畑に変わっている。そこで栽培されたコットンを使って、現地の人々と渡邊の会社などがビジネスを立ち上げ、貧困問題解決の一助にしようというプロジェクトだ。
実際にビジネスに乗り出すか、それを判断するため、渡邊はカンボジアに向かった。
現地の人々とは、対等なビジネスパートナーでありたいと考える渡邊。同じ夢を追おうと、目標を語った。

写真写真必要なのは、対等なビジネスパートナーとしての関係


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

日々努力をし、そして、日々改善改革をし、『私だけしかできなかったね、この努力』という、そういうことを言える人

社会起業家 渡邊智恵子


プロフェッショナルの時間活用術

経営者であり、母親でもある渡邊は常に時間に追われている。そんな渡邊には、独自の時間やりくり術がある。毎朝4時半に起床。起きてすぐに、高校生になる1人娘のためのお弁当作りに加え、100通近い会社のメールのチェックを行う。デスクワークは、極力日中職場でやらない方が、ミーティングや商談に集中できると考えているからだ。そして、メールの後は早朝の散歩だ。1日の中で完全に1人になれる貴重な時間を意識的に作り出す。夜は、7~9時に帰宅。すぐに夕飯の支度に取りかかる。その時欠かせないのが、ビール。フタをあけた瞬間、仕事は一切忘れる。オンとオフをしっかりと切り替えて、明日への活力を蓄える。

写真起床は、朝4時半。起きてすぐ仕事のスイッチが入る
写真家庭と仕事の両立のため、オンとオフの切り替えを意識的に行う


放送されなかった流儀

三方よし

作り手、売り手、買い手。この3方がすべてよしとなれば、ビジネスとして最高だと渡邊は考えている。例えば、自分の会社だけが利益を上げればいいという考えで、売り手が作り手を搾取してしまえば、息の長いビジネスができなくなる。渡邊は、身の丈にあった成長をみんなでしていきたいと、常に考えている。

写真写真