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これまでの放送

第161回 2010年11月15日放送

はいつくばれ、その先に真実がある 交通鑑識・池森 昭



素直に、見る

交通事故の起こった現場に立ち、どのように事故が起こったのかを明らかにすることが池森の仕事の基本だ。ブレーキ痕、ガードレールや路面の破損、そして残された車の部品や塗料など、現場で発見したあらゆるものから状況を推定していく。その際に池森が大切にしているのが、「素直に見る」という姿勢。先入観をもたず、常にまっさらな気持ちを持って証拠をたどっていくことで、確実に、事故の瞬間に起きたことに迫っていく。『起きたことを逆巻きにしていく作業』と、池森は言う。

写真「事故現場には、必ず何かが残る」が、池森の信念。


納得しきるまで、やり続ける

ひき逃げ事件の捜査において、重要な手がかりとなるのが塗膜片の鑑定だ。車のわずかな塗料を顕微鏡で調べ、膨大な車種・製造年の車から、一致するものを探り出す。気の遠くなるような作業だ。池森が出した鑑定結果により、100人を超える捜査員が一斉に動く。間違った捜査方針は、決して出すことはできない。この作業を行うとき、池森が最も大切にするのが、「納得しきるまで、やり続ける」という信念だ。鑑定は、どんなに調べ尽くしても100パーセント間違いないと言い切ることは出来ない仕事。しかし、自分はすべてのことをやり切ったという自負があるからこそ、池森は重大な責任を負うことができると言う。

写真被害者のため、遺族のために、池森は決してあきらめない


プロフェッショナルとは…画像をクリックすると動画を見ることができます。

現状に満足することなく、探求心と、挑戦するという気持ちを持ち続けることかなと思います。

交通鑑識 池森 昭


The Professional's Tools(プロフェッショナルの道具)

ピンセット

池森が最も大切にする道具が、ピンセット。現場に残された微細な証拠品を扱うため、対象の大きさや固さに応じて、太さや材質の違う3種類のピンセットを使い分けている。週に一回は顕微鏡で先を見ながら手入れを行う。自分自身の「指」だという。

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赤外線照射機

一見、鍋のようにも見える金属製の機械。これは、被害者の衣服などに赤外線を当て、肉眼では見えない線を見るための道具だ。これで、自動車との衝突によりつぶれた繊維や、目に見えないほど微細なひっかき傷を見つけ出し、衝突した時の状況を推定。捜査の大きな手がかりとなるという。

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業務用掃除機

ひき逃げ事件などで活躍するのが、大型の業務用掃除機だ。水も吸い込むというこの掃除機を事故現場一帯にかけ、土やチリなどをできる限り集める。この土を、先を削った割りばしで一粒一粒より分けながら、重要な証拠品が紛れていないか、探していく。

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放送されなかった流儀

オンとオフ

現場を離れると、池森は人懐っこい笑顔が似合う、普通のおじさんになる。ひとたび事件の捜査が始まれば、何十時間も集中を続け鑑定を行う日々。待機の時間は意識的にリラックスすることが、地道な作業にも耐えることができる秘けつだと言う。

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