海老蔵が生まれた市川家は、350年に及ぶ伝統を誇る歌舞伎界随一の名門。その市川家の芸を、海老蔵は幼いころからたたき込まれてきた。その一つが、代々伝わる演技の「型」だ。歌舞伎では、感情や役柄を表現するために、顔の向きや手足の位置などが細かく決まっている。海老蔵はそうした型を大切に受け継ぎつつも、ただ伝統を守るのではなく、新しい試みにも次々と挑戦してきた。「歌舞伎には型があるので、『これじゃなくちゃいけない』ということがある。でも、『これじゃなくちゃいけない』ということイコール、『これでいいんだ』的なことになりがちな部分もある。」
歌舞伎の伝統を守りながら、現状に満足せず攻め続ける。それが海老蔵の流儀だ。