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第140回 2010年3月16日放送

どんなときでも、命は輝く 訪問看護師・秋山正子


「隣のおばさん」になる

自宅での療養では、医師や看護師が常駐している病院とは違い、さまざまな困難がともなう。
秋山は訪問すると、家の中の様子をさりげなく見る。そして、話題にできそうなものを見つけて、話しかける。一見、何気ない世間話。医療者にはいいづらいことも言える雰囲気を作る。そうすると、相手が胸のうちに抱えているものを話し出してくれるようになり、そこから病状の悪化をいち早く察知できることが少なくないという。

写真おだやかな笑顔で話を聞く


今、生きている喜びを、味わう

療養生活が長引けば、気持ちが後ろ向きになりがちだ。その心を支えるために秋山は、その人の“輝き”を引き出すことを大切にする。若かったころのことなどを思い出してもらうことで、表情が生き生きとし、輝きを増してくる。また、よく眠れるようになったり食欲が増したりすることにつながるという。
こうしたかかわりを通して、今を生きている喜びを皆に感じてもらいたいと秋山は考える。住み慣れた自宅で、窓を開けて季節の移り変わりを感じたり、いつもの食事を食べておいしいと思ったり、そんなちょっとした喜びこそが、今、生きているあかしだという。

写真その人の“輝き”を引き出そうとする


最後のプレゼント

秋山は、39歳のとき、2つ上の姉を肝臓がんで亡くしている。
姉は主婦として家事をこなすことに誇りをもっていたため、秋山はベッドを台所が見渡せる場所に置いた。
料理は、ベッドの上から夫に指示を出して作り、学校から帰ってきた子どもたちはベッドの周りで遊んだ。
家族に囲まれた姉のおだやかな最期の日々は、秋山にとって姉からの「最後のプレゼント」となり、今でも生きる力となっている。
1月、利用者の中の最高齢の男性が、体調を崩し、大事な時期を迎えていた。最善を尽くしても元へは戻っていかない厳しい現実を前に、家族は戸惑いをかくせない。秋山は、男性と家族とがおだやかな日々を取り戻すために、大切なメッセージを伝えようと決めた。

写真秋山は亡き姉といつも行動をともにしていた


プロフェッショナルとは…

目の前に委ねられた人々に対して最善を尽くして自分の与えられた使命を果たしていく。そして限界を知りながらそこを越えられるようにチャレンジをする。それがプロフェッショナルだと思います。

秋山正子

The Professional’s Tools

キャップに穴を開けたペットボトル

かならずしも医療器具がそろっているわけではない、自宅での療養。
秋山は、専用の道具を新たに買い揃えなくてもいいように、身の回りにある物を工夫して利用する。
例えば、ペットボトルのキャップに穴を開け、ベッドの上でお湯と紙おむつを使って患部を洗浄したり髪を洗うこともできるという。

写真キャップに穴を開ければ、シャワーとして使える


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