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これまでの放送

スペシャル 2010年2月23日放送

道具こそ命!「プロの道具」スペシャル
医師・アスリート・アーティスト・キャスター・伝統文化の匠・料理長


医師たちの道具 医療の最前線に立つスゴ腕の医師たち。道具は時に生死を分ける。まさに命の道具だ。

脳神経外科医・上山博康

脳卒中を引き起こす脳動脈瘤(りゅう)。その手術の第一人者、脳神経外科医の上山博康の道具は、ほとんどがオリジナルだ。特に、手術用のはさみ。刃が薄いが、アールをつけることで、挟まれたものがカミソリのような切り方で切れる。また、閉じた状態では、両側に刃が出ないように丸く収まるようにしたことで、癒着をはがす「剥離子(はくりし)」にもなる。これ一つで、二本分の道具の役割をこなす。上山の動脈瘤の手術では、動脈瘤が出るまでずっとこれだけでやれると言う。更に、脳外科手術で使う針と糸を見せながら、手術の極意を語った。

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大腸内視鏡医・工藤進英

急増する大腸がんの治療として注目を集める、大腸内視鏡治療。そのエキスパート、大腸内視鏡医・工藤進英の道具は、医療器機メーカーと共同開発した最新鋭の内視鏡だ。右左・上下、更に空気を出したり水を出したりと自由自在に腸内を動くことができ、診断・治療に使われる。通常の100倍の倍率のレンズで、病変の細かな特徴までとらえられるため、組織を取って精密検査に出さなくても、その場で悪性かどうか診断できると言う。更に、その場で治療までできる。

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心臓内科医・延吉正清

心筋こうそく・狭心症などの心臓病に対して行われる、カテーテル治療の第一人者、心臓内科医・延吉正清。動脈硬化などで詰まった患部を、血管を傷つけることなく治療するプロフェッショナルだ。延吉の道具は、ずばりカテーテル。番組では、カテーテル治療の実演を披露。複雑に絡み合ったたくさんの血管の中を縦横無尽に動き、血管の分岐点にもするっと入り込む、驚きのカテーテルの技。カテーテルを入れながら、その指先で血管の状態もわかると言う。

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アスリート・アーティストの道具 華やかな活躍を陰で支える、驚きの道具を公開。

サッカー日本代表・中澤佑二

サッカー日本代表のキャプテンとしてワールドカップに挑む、中澤佑二。中澤の道具はまさにアスリートの魂、シューズだ。4足あり、練習か試合か、あるいはグラウンドの具合、体のコンディションやフィーリングによって使い分ける。ひざや足首に故障があるため、練習用のシューズは、足に負担のかからないよう、衝撃が分散するような作りになっている。試合の時は、滑らないよう、地面をしっかりかんでくれるもの。更に、芝生が深いグラウンドの場合は、裏側のスパイクが、より少なく、より長めにとがっているものを使う。雨で地面がぐちょぐちょになっている時は、裏側に金属のついたシューズだ。

バレリーナ・吉田都

世界を舞台に活躍するバレリーナ、吉田都。29歳で英国ロイヤルバレエ団の最高位プリンシパルに日本人女性として初めて就任。43歳の今も、東京とロンドンを往復しながら踊り続ける。そんな吉田の道具は、なんといってもトウシューズ。練習には10足持っていく。しかも、自分の足に合うように自ら改良している。その改良に使う道具として、バッグに持ち歩いているのが、デンタルフロス、ニッパー、カッター、ライターなど、一見バレリーナの道具とは思えないような意表をついたものばかりだ。

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キャスターの道具 番組キャスター、茂木健一郎と住吉美紀も、ふだん人には見せない、自らの道具を公開。

茂木健一郎

茂木の道具は、どこに行くにも持ち歩く、大きなリュックだ。その中に入っているのは、パソコン、ICレコーダー、デジタルカメラ、名刺入れ、パスポート、そして電子ブックリーダー。電子ブックリーダーとは、電子書籍や新聞をダウンロードし、どこでも読むことができる。茂木は今39冊の本を入れている。

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住吉美紀

住吉が紹介したのは、毎日全力で仕事に取り組むための、家に帰ってからの道具。まず、電気。くつろいだ気持ちになりたいので、天井の電気をつけず、間接照明にこだわっている。スタジオの照明とは違う、ほのかな温かい灯り。収録で高まった気分がすーっと静まっていくという。そして、お香。仕事からオフに気分を切り替える時に使う。手っ取り早く休息モードに入れるので、よく使っている。お気に入りは、白檀のお香だ。

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日本の伝統文化を陰で支える匠たちの道具 思いもよらない道具に、キャスター二人も度肝(どぎも)を抜かれた。

文化財輸送・海老名和明

国宝・阿修羅立像など名だたる文化財を展覧会などのために運んできた。技術の粋を尽くし、貴重な日本の宝を輸送する「現代の名工」。海老名の道具は、ハイテクからアナログなものまで多岐にわたる。水平や垂直を図る器具、仏像を傷つけずに長さや距離をはかる道具。更に、薄用紙と呼ばれる特別な紙、座像を安全に運ぶためのマス、そしてL型と呼ばれる木枠。細かいところにまで工夫が施され、どんな小さいディテールにも意味があり、海老名がすべて的確に説明することに、住吉はプロフェッショナリズムを感じたと言う。

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文化財修理技術者・鈴木裕

古文書や屏風(びょうぶ)、ふすま絵など紙の文化財をよみがえらせる 、修復のプロフェッショナル。虫に食われたり、破れたり、そのままでは朽ちてしまう紙を、0.1ミリ単位で修復する。大きさも素材も異なるさまざまなハケ、そしてまち針がついたような道具は、音を立てて、文化財の今の状態を調べるもの。更に手術用のメス。中には、実際には使わないが、落ち着くので持っているというふすまの引き手もあった。トレーニング用の紙を使って、実際に修復を行う技術の実演に、茂木もうなった。鈴木の道具は、鈴木の身体の延長にまでなっていると、茂木は言う。

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道具の陰の秘められた物語

ホテル総料理長・田中健一郎

創業120年、日本を代表する名門ホテルの総料理長、田中健一郎。田中が特に大切にしているナイフがある。52歳の時、総料理長に抜てきされた時に、あこがれの人、先代総料理長・村上信夫(通称・ムッシュ)にもらったナイフだ。紀宮様の結婚披露宴のすべての指揮をとることになった田中に、ムッシュが言った。「無事に披露宴が終わったら、おいしいシャンパンで乾杯しよう」。しかし、ムッシュは突然亡くなってしまう。田中は気持ちを奮い立たせ、大事な披露宴の準備にまい進した。
2005年11月15日。紀宮様の結婚披露宴の日。田中は、ムッシュからもらったナイフを手に取り、気合いを入れた。披露宴は滞りなく終わったが、ムッシュとの約束を果たせなかったことだけが田中の心残りだった。
数日後、ムッシュの遺族から送られたきた遺品の中に、ムッシュが愛用していたナイフがあった。それは、かつて、ムッシュが田中に手渡したナイフとまったく同じもの。ムッシュの魂が帰ってきた、と田中は思った。

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