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第135回 2010年2月2日放送

サラリーマンは、スジを通せ 鉄道ダイヤ作成・牛田貢平


スジは机で引くな、‘現場’で引け

牛田たちスジ屋の大きな仕事はダイヤ改正のために、列車運行表を作ること。中には1日のすべての列車の動きが書き込まれ、600以上の‘スジ’がひかれている。
牛田が表を作る際に最も大切にしているのは、これまでの実績ややり方にとらわれず、駅や客(現場)の変化に常に向き合い、そこから考えること。
牛田は、ここ2年の東西線のダイヤ改正の際、朝ラッシュの時間帯のすべての電車にのり、すべての駅の状況を把握した。現場の実態を克明に記録し、それにあわせて各列車の駅での停車時間を5秒単位で振り分けし直したのだ。
その結果、朝ラッシュの時間帯の慢性的な遅延は半分以下になり、遅れに対する客からの苦情も10分の1に減った。牛田のダイヤはこうした徹底した現場主義から生まれた。

写真牛田は足繁く現場に通い、現場の状況を記録。
特に、数字に表れない変化に目をこらす。


ダイヤの向こうに、客を見る

牛田たちスジ屋は、ふだんのダイヤ改正以外に、季節のイベントなどに対応した臨時ダイヤも作る。昨年11月、牛田は大みそかの終夜運転の臨時ダイヤを作っていた。
ダイヤを作り始めた牛田は何度も行き詰まる。乗務員のシフトや他社の車両の乗り入れなど制約の多い中で、ほんの少しでも客の利便を良くできないかと心を砕いていたからだ。
牛田は今回、一本のスジの動きをどうするかを数時間にわたって考え続けた。牛田のダイヤ作りは、ダイヤの向こう側にある客の生活を強く意識されている。

写真一本のスジを決めるのに時に数日を要するのは、客のことを常に意識しているため。


サラリーマンは、スジを通せ

昨年秋、牛田は大きな決断を迫られていた。平成22年度のダイヤ改正を行うか否かの選択である。もともと会社は、改正を行わない方針。牛田もその方針に沿うつもりだった。だが牛田は、改正に踏み切れるギリギリのタイミングで動き始める。手元に新たな検証資料が届き検証した結果、今からでも改正できると考えたからだった。心にはスジ屋という役割を担う者として、客の利便を少しでも良くしたいという思いがあった。
しかしこの提案に対し、上司は当然の疑問を呈す。もともと改正は行わない流れで動いていた会社全体を改正に向けて動かし始める意味と効果は本当にあるのかというものだ。サラリーマンとして組織の中で働く中で、本当に客のために動くとはどういうことか。牛田は考えに考え、覚悟の決断をする。

写真牛田は自らの役割を果たすため
時に上司と衝突することも辞さない


プロフェッショナルとは…

課題解決のために、今までの考え方に縛られず、その時最適の方法を生み出すことが出来る人、また、そのための努力を怠らない人。

牛田貢平

The Professional’s Tools

列車運行表

牛田たちスジ屋が作り、また仕事道具として常に持ち歩くのが列車運行表。路線の関係者すべてがこれをもとに仕事を進める。牛田もこれを手に現場に立ち、変化し続ける東京の街と人に向き合う。ダイヤ改正は一度行うと1年以上は行えない。それだけに、自らの作ったダイヤが本当に現状に即したものなのかは常に考えている。牛田にとって列車運行表は、過去の自分の仕事そのものであり、それと向き合って、より良いダイヤを作るための道具でもあるのだ。

写真写真牛田が作る運行表は広げると2~3メートルの長さに


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