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第126回 2009年9月15日放送

闘いの螺旋(らせん)、いまだ終わらず 漫画家・井上雄彦


手に負えないことをやる

「スラムダンク」「バガボンド」「リアル」と、メガヒットを連発する井上の創作活動を支えているのは「手に負えないことをやる」という信念だ。
例えば、「バガボンド」の連載途中から使い始めた毛筆。筆は、漫画家が一般的に用いるGペンに比べて毛先が柔らかいため、予期せぬ動きをする。井上は、あえて自らの感覚を筆に委ねることにより、よりナマっぽい絵を生み出した。さらには、原稿を飛び越えて巨大な和紙に挑み、東京・熊本でマンガ展を開催。大反響を呼んでいる。

写真「井上雄彦 最後のマンガ展」で武蔵を描く


迎えにいく

連載を続ける中で、井上が最も悩み苦しむのが「ネーム作り」と呼ばれる作業だ。ネームとは、物語の展開を考えてコマを割り、絵の構図やキャラクターの動き・セリフなどを大まかに書き記したもの。ここで、漫画のすべてが決定されるという。
ネームを考えるのは、お気に入りの喫茶店。そこで、井上はキャラクターを「迎えにいく」のだという。キャラクターが何をしたいのか、どんな人生を歩んできたのか…。ひたすらキャラクターと向き合い、考え抜くことで、ストーリーを紡ぎ出していく。

写真ネーム作りは、喫茶店をハシゴしながら行う


こぼさない

井上の筆は、極めて速い。ネーム作りで1週間の大半を費やし、残りの2日ほどで一気に原稿を仕上げる。井上は筆入れの際、いったん引いた線を基本的に修正することはない。常に一発勝負だ。
「こういう感情のとき、人はどういう顔をしますっていうサンプルがあるわけじゃないので、自分がその感情になって描くしかない。武蔵の感情がちゃんとわかってるかどうかっていうこと。こぼさないっていうか、外さないっていうか」。

写真主人公・宮本武蔵の顔を描く井上


プロフェッショナルとは…

向上し続ける人ですかね。これがなくなったらプロをやめないとって思ってることが、それなんで。だから、プロフェッショナルというのは、向上し続ける人、と思います。

井上雄彦

The Professional’s Tools

ネームノート

井上がネーム作りに用いるノート。コマ割りがなされ、キャラクターやセリフが描かれている。見た目は、極めてラフなものだが、井上はこれを見ただけでキャラクターのどんな表情を描きたいか、読み方のリズム、シーンのどこに重きを置きたいか…など、克明に思い返すことができるという。

写真ネームノートは、創作の「骨」


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