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第117回 2009年4月28日放送

不安の先に、光明はある 文化財輸送・海老名和明


やさしい梱包

かつて文化財の梱包(こんぽう)は薄葉紙(うすようし)に加え、大量の綿などで全面を厳重に覆っていた。しかし海老名は常に最小限の梱包を心がける。
文化財特有の薄葉紙という紙ををやわらかくもみ、頭や顔など特に壊れやすい部分だけを手当していく。過剰に梱包すると、振動で覆った部分がこすれ、木像の表面を傷めかねないからだ。
輸送中の振動から文化財を守り、かつ荷重で文化財を傷めない、ぎりぎりの「文化財にやさしい梱包」。それを海老名は常に心がける。

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無になる

今や、文化財輸送の世界で、並ぶものがいないと言われる海老名。だが、今もって、ある感情と戦い続ける。それは、「恐怖」だ。海老名は言う。「文化財輸送の仕事は、やればやるほど怖くなりますね。不安でいっぱいですよ、どんな仕事も。」
海老名は現場に、必ず作業開始の1時間以上前にやってくる。そこで何をするわけでもなく、ぼーっと虚空を見つめる。雑念を振り払って、無心になり、集中力を高めるのだ。海老名にとって欠かせない、大切な時間だ。

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阿修羅像輸送・海老名の悲願

海老名はこの春、かつてない大仕事に挑んだ。およそ1300年前につくられた興福寺の国宝、阿修羅像を運ぶのだ。胴体の中は空洞というきわめて繊細な構造の阿修羅像。いかに振動を与えずに運ぶかが輸送の成否を握る。海老名は防振装置をとりつけたアルミ製の箱をつくった。しかし、輸送実験では、防振装置が振動をほとんど吸収できていないという結果が出る。落ち込むメンバーたちに海老名は再実験を提案。さらに、ある秘策を考え、できるだけ阿修羅を振動から守れるよう、本番直前まで全力を尽くす。

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プロフェッショナルとは…

仕事に対して逃げないということが一番大事でしょうね。絶えず前向きに進めるということが一番重要じゃないでしょうか。

海老名和明

The Professional’s Tools

文化財梱包に使う薄葉紙

文化財をいためないよう、中性の和紙を使用。繊維が長く、紙自体に強度があるため、よくもみ、ふわふわにしてから顔や手など壊れやすい部分にそっとあてて養生する。

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