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第101回 2008年10月28日放送

夢を恐れず、走り続けろ 人工心臓開発・野尻知里


チアリーダーになりきる

医療機器メーカーのアメリカ法人でCEOを務め、新型人工心臓の開発で130人を率いるリーダー野尻の流儀は、「チアリーダーになりきる」こと。月に一度行われる会社全体の会議では、スタッフたちが朝食を食べる中、野尻自身はイスを並べ、会議場の設営を行う。そして、スタッフの前ではつとめて明るく振る舞い、チアリーダーのように前向きにスタッフを盛り立て、モチベーションにつなげるのだ。「しんどくても引きずり上げたいというのがあってね。そうするとチームの力になりますからね」

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夢が、人を動かす

「助からない人を助けるというのは、大きな夢なのよね」野尻は、かつて心臓外科医として臨床現場に立っていたが、医療の限界を痛感し、人工心臓の開発に身を転じた。心臓病に苦しむ患者を一人でも多く救うことが、野尻の夢だ。8年前、野尻はわずか4人でアメリカに渡り、新型人工心臓に取り組んできた。チームの一人ひとりに夢を熱く語り、夢を共有する仲間を徐々に増やしてきた。「夢を見えるようにしてるから、彼らもついて来るんだと思う。私について来るんじゃなくて、私が見ている夢が実現できるからついて来るんだと」

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夢をかなえるのは、自分

去年ヨーロッパで認可された新型人工心臓。そして今年、野尻たちは長年の悲願である心臓病大国アメリカでの認可に向けて、臨床試験の準備に奔走していた。
ある名門大学病院との臨床試験の契約一歩手前で、難しい問題が持ち上がった。大学病院が値引きを要求してきたのだ。(アメリカでは臨床試験の段階で病院が医療機器を買い取る)名門の大学病院が臨床試験に参加してくれれば、ほかの病院への交渉にはずみがつく。だが一方でビジネスの成立も考えなければならない。野尻は、メンバーたちの意見を聞き、最後にこう締めくくった。「長い時間がかかると覚悟を決めましょう」。価格を下げずに、粘り強く交渉を続けることを決意した。
簡単にはあきらめず、夢に向かって挑戦し続けることが、野尻の信念だ。
「夢を持ったら自分でつかまないとね、人はくれないから。私、結構しつこいんで、やると言ったらやる。絶対にあきらめない」

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プロフェッショナルとは…

まず大事なのは、何にパッションを覚えるかを探すこと。それを見つけたら、もうしつこく粘り強くあきらめずやり続けること。障害があったら、それをスプリングボードにすることだと思います。

野尻知里

The Professional’s Tools

ヨーロッパで認可 新型人工心臓

人工心臓には大きく分けて2つのタイプがある。心臓を丸ごと置き換える「全置換型人工心臓」と、心臓を体内に残したまま、その機能の一部を補助する「補助人工心臓」。野尻の人工心臓は、左心室(血液を体内に送り出すポンプの役目を果たす)の機能を補助する「左心補助人工心臓」だ。体内に埋め込まれるポンプと体外で患者が携帯できるコントローラー、バッテリーが主な構成品だ。





野尻の人工心臓は、ポンプ内部に独自の仕組みを持っている。羽根車を磁石の力で宙に浮かせて回転させるのだ。軸がなく、どこにも接触しないので、最も恐れる血栓ができにくいと期待されている。磁石の力で羽根車をわずか0,25ミリメートルだけ浮かし、正確に回転させる高度な精密機器だ。

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