治療の手立てがないと宣告された人々は、迫り来る死への恐怖や後悔の念など、さまざまな心の痛みを抱えている。田村は正面から向き合い、対話を通して、その心を解きほぐしていく。そして、心の奥に必ずあると信じる「希望」を見つけ出す手伝いをする。
治療の手立てがないと宣告された人々は、迫り来る死への恐怖や後悔の念など、さまざまな心の痛みを抱えている。田村は正面から向き合い、対話を通して、その心を解きほぐしていく。そして、心の奥に必ずあると信じる「希望」を見つけ出す手伝いをする。
何時間でも患者と話す
入院していた36歳の男性が、退院して再び抗がん剤治療に臨みたいと言い出した。
この段階での治療は、効果よりも副作用で苦しむだけの可能性が高いと心配する田村たち。リスクを伝えたが、それでも男性の決意は固い。
「その人が選んで決めた生き方を、貫いてほしい」。
田村たちは、男性の選択を全力で支えると決めた。
「自分らしい生き方」を支えようと苦悩する田村
4月下旬、56歳の男性が緊急入院してきた。肝臓にがんが転移し、急激に痛みが強くなっていた。男性の気力を支えていたのは、6月7日の娘の結婚式。しかし、医学的に見て、それより前に最期のときが来る可能性は高い。
「せめて、花嫁衣装を着た娘と写真を撮ってはどうか」
しかしこの提案を本人に伝えれば、結婚式までは生きられない事実をつきつけることにもなる。一方で、日に日に悪化していく病状。このままでは、手遅れになる。ぎりぎりの決断を迫られる田村。そのとき心に浮かんだのは、「心残さず、生ききる」という言葉だった。
花嫁の父を支える田村