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第97回 2008年9月9日放送

古都の雅(みやび)、菓子のこころ 京菓子司・山口富藏


羅漢(らかん)のように

山口の菓子はすべて手作り。京菓子の伝統にのっとり、限られた素材と決められた製法で生み出される。その際、山口はすべての菓子を均等にそろえようとはしない。あえてひとつひとつを不ぞろいにする。
自然に生まれた「菓子の顔」の違いを山口は羅漢像にたとえる。ひとりひとり、表情が違う羅漢像。その不ぞろいの中にある美しさこそ、山口が目指す菓子の景色だ。

写真
写真山口の目指す菓子の「景色」


人の心と心をつないでこそ、京菓子

山口が菓子司として最も高い評価を得ているのが、茶の湯の菓子。茶会で出される菓子は単なる添え物ではなく、茶会を開く亭主がどのような趣向でその会を催すのかを客に伝える役割がある。山口はそのデザインの独創性で知られている。
たとえば、中秋の名月の趣向で奈良の唐招提寺で開かれた茶会。茶会の亭主は、寺に納められた東山魁夷の作品をいたく気に入っていた。山口はそれをモチーフとしたくずの菓子を作った。中に忍ばせたゆり根で、波間に写る月を表現した。

写真山口がある茶会のために作った菓子


一期一会

日々、菓子作りと向き合う山口が心に刻む言葉、「一期一会」。もともとは千利休が説いたと言われる茶道の心得であり、「茶会での出会いは、一生に一度きりのものだと心得、二度と巡って来ない一度きりの出会いのために誠意を尽くせ」という教えを言う。山口はこの言葉に菓子司の本分があると考える。「菓子は食べてしまったら消えますやん。残る仕事やない。それだけに一つひとつ心してないといけない」と山口は言う。茶会で客が食べる菓子はひとつだけ、しかも一度きりのもの。一個一個の菓子、一回一回の客の注文と真摯(しんし)に向き合い、誠意を尽くすことこそが菓子司の仕事の本質だと山口は言う。

写真客も菓子も一期一会と胸に刻む山口


プロフェッショナルとは…

やっぱり楽しめなあかんでしょう、やっていることに。自分の仕事であるけれども、そこになんとも言えん自分なりのうれしさを感じて楽しんで。プロをプロとしてやっていたらあかんと思います。やっぱりプロを楽しんでやらないと。

山口富藏

The Professional’s Tools

ポンポン

かたくり粉を白い布で包んだ「ポンポン」。女性が化粧で使うおしろいのように、はたいて使う。菓子が器などに付着するのを防ぐために使う。

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はし

竹を削っただけのシンプルな箸(はし)。菓子を盛り付けたり、形を整えたりするのに使う道具。山口の店では、職人ひとりひとりが自ら竹を削って「マイ箸」を作る。その際、竹の皮を残すのがポイント。皮が残っていると、菓子が箸に引っ付きにくくなるという。

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