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スペシャル 2008年8月5日放送

宮崎駿のすべて ~「ポニョ」密着300日 ~


映画の奴隷になる

宮崎はイメージボードで構想を膨らませ、絵コンテによって脚本化し、アニメーターが描いた原画・動画を自ら手直しする。そして背景美術・色彩設計・撮影など各過程の細部に至るまで自らの色に染め上げる。宮崎にとって、映画制作は「作る」というより、「作らされる」という感覚だという。そこにあるのは、自らを「映画の奴隷」として見立てて、少しでも良い作品を生み出そうとする、全身全霊を捧げてゆくすさまじいまでの気迫だ。ゆえに宮崎は映画に関わる全スタッフに対して峻烈(しゅんれつ)なまでの気構えを求め、またそれ以上のものを自らにも求めていく。

写真アニメーターが描いた絵を監督自らすべてチェックする


半径3メートルで仕事をする

「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」など数々の作品を世に送り出してきた宮崎。企画を生み出すとき、宮崎は「半径3メートルで仕事をする」という信念を大切にしてきた。宮崎は身近なところで出会ったものを梃子(てこ)にして想像力を最大限に膨らませ、イメージを紡ぎ出してゆく。家の近所で見つけたバス停や、スタッフの娘など、意外なほど近いところにアイデアの種はあるという。宮崎にとって映画とは単なる空想や作り話ではなく、日々の体験や出会ったものから生み出されたものにほかならない。宮崎は映画作りという過程に、自らの人生を刻印しているのだ。

写真宮崎が見聞きものが映画に反映されてゆく


人を楽しませたい

67歳にして、宮崎を創作に駆り立てるものは何なのか。宮崎がこれまであまり語ることのなかった胸の内を明かした。「人に楽しんでもらいたいという意識なんだよ、動機はね。なぜ楽しんでもらいたいかといったら、楽しんでもらえたら、自分の存在が許されるんではないかっていう、無用なものではなくてというふうな抑圧が自分の中にあるから。…それは、幼児期に形成された物が何かあるんだろうと思うんだけど。それを別にほじくりたいとは思わない。僕はとにかく人に楽しんでもらうことが好きですよ」。

写真「楽しんでもらえてこそ、自分の存在が許される」


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