工場長として11人の職人を束ねる国村だが、今も職人として現場に立ち続ける。
金属加工の技術は、業界でも指折りだ。最も得意とするのは、ハンマーなどを使い、金属の板から曲面を作る「打ち出し板金」だ。一見単純に見える作業だが、そこには並外れた職人技が隠されている。国村が放つハンマーは、常に板に垂直、しかも狙った場所を正確に打つ。そのために、左手と足で、金属の板を微妙に動かす。職人として、いかに無駄なく、早く品物を作り上げるかに徹底してこだわる。ハンマーは必要最小限のみしか打たない。金属の特性を知り尽くした国村は、どこをどの程度の力で打てばよいか読み切っている。作業にかかる時間は、他の職人の半分。驚くべきスピードで、美しく正確な曲面を生み出していく。