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これまでの放送

第86回 2008年5月13日放送

気負わず、おごらず、立ち止まらず 映画監督 演出家・堤 幸彦


ジタバタし続ける

堤は毎日、俳優が到着する2時間前に現場に入る。そして、一人で撮影セットの中をうろつく。映像のプランは自分の中では既に出来上がってはいる。それでも、俳優の動きを自分でなぞりながら、ギリギリまで練り直す。堤は言う。「毎日、ドキドキする。これ漏れてるんじゃないか、これ、もうちょっと言わなきゃいけないんじゃないかってことが、ままよくあるので、それをずーっとOKっていうまで考えてますよね」

写真
写真 俳優の動きやカメラのアングルを決めるのは監督の仕事。
実際の現場に立って、台本から映像を組み立てる。


悔いを残していないか

11月下旬の夜、冷たい川の中で行われた撮影。気温は4度、そこに人工的に嵐を作り出す。ずぶぬれになり演技をする俳優への負担は相当なものだ。しかし堤は納得がいくカットが撮れるまでOKは出さない。映画作りには、さまざまな制約がある。予算・時間・天候。俳優の体調も考えねばならない。その制約の中で、堤は、常にギリギリまで粘り続ける。

写真本番中、モニターをにらみ続ける堤。


人を楽しませるものを作ろう

堤が25歳のとき、初めてディレクターとして携わった視聴者参加のカラオケ番組。その現場で目にした観客の笑顔から、堤はこの仕事のすばらしさに気が付いた――「どんな形であれ、人を喜ばせる仕事って、すばらしい」。活躍の舞台を映画に移した今も、堤は人を楽しませることだけを見すえ、現場に立ち続けている。

写真「せめて自分の作品を見るときには楽しんで欲しい」
――いかなる現場においても堤が貫き続ける姿勢だ。


プロフェッショナルとは…

どんな逆境でも楽しめることじゃないですかね。楽しめる人がプロフェッショナルだと思うし、僕自身もずっと楽しみ続けたい。楽しみを見つけたい。そう思っている。楽しむということがプロフェッショナルの基本だと思います

堤 幸彦

The Professional’s Tools

台本カバー

大切な台本を痛めないため、丈夫な皮で作られたカバー。サイドポケットには筆記用具入れがあり、シャープペンシル・物差し・消しゴムが入れられている。撮影現場で、事前のカット割を書き変える頻度の多い、堤ならではの仕事道具。さらに雨天や山間ロケといった過酷な使用条件にも耐えられるよう、ダンボールで補強している。

写真
写真映画監督にとって台本は、「世界観を構築する基本となるもの」。自分が使いやすいよう、カスタマイズを繰り返している。


薬袋

連日、屋外の撮影が続くため、多種類の薬を持ち歩いている。風邪薬はもちろん、頭痛薬・胃腸薬・目薬・耳鳴り薬…。いわく「中年になると結構、生活も面倒くさくなって、いろいろな薬や何だ、いっぱいないとだめ」と笑う。監督が体調を崩すと、撮影現場は止まってしまう。体調管理も、映画監督の大切な仕事だ。

写真体温計も常に持ち歩く。「体温が上がると病院に行かなきゃという警告」と言う。


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