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これまでの放送

第83回 2008年4月8日放送

隊長は背中で指揮をとる ハイパーレスキュー 部隊長・宮本和敏


背中で隊を率いる

ハイパーレスキューは、通常の消防隊だけでは対処しきれない困難な現場に呼ばれる。刻々と変化する災害現場に臨機応変に対処し、救出を成功させるために大事なのはチームワークだ。重いがれき、煙や炎・・・災害に一人で立ち向かっても、おのずと限界がくる。
最高のチームを作るための第一歩は、まず指揮官である宮本自身が、隊員達から100%の信頼を得ること。少しでも隊員達が指揮官の能力に不安を抱けば、命を預け、現場に飛び込んでいくことなど出来ないのだ。
だから宮本は毎日、自分を追い込み続ける。走り込みに、筋力トレーニング。休みの日も災害や救助の知識を詰め込む。言葉で叱咤(しった)するのではなく、ただ自分の能力を高めることこそ、隊員のモチベーションを高め、団結力を生む方法だと考えているのだ。

写真部隊でもトップレベルの身体能力を誇る


信用する 信頼はしない

宮本の災害現場での仕事は、瞬時に作戦を練り、指示を出すことだけではない。指示を受けた隊員達の動きをいつも注意深く見ている。鍛え抜かれた隊員たちといえども、災害現場では少なからず平常心が乱れる。自分の身のまわりにある危険を見落とし、思わぬ事故に遭遇してしまう可能性もある。隊員たちの盲点をカバーし、事故を未然に防ぐのも指揮官の役目だ。
宮本の言う「信頼」とは、100%信じて頼ること。
「人間のやることですから、必ず落とし穴がある。それが思わぬ大事故につながったりするので、一歩さがって、100%の信頼はあり得ないという立場から、目を光らせていかないといけない。」
隊員を信じて現場に送り出しながら、冷静な目を持つことも忘れない。

写真住宅の解体現場で、震災を想定しての訓練。訓練中も隊員達から目を離さない。


技量がなければ、命は救えない

宮本には、決して忘れられない無念の過去がある。25歳の時出動した住宅火災。逃げ遅れがいたが、火の勢いが激しすぎて、上官から中に入るのを止められた。焼け跡から、子ども二人を胸に抱いた母親の遺体が見つかった。
命を救いたい、人の役に立ちたい・・・その思いは誰にも負けないつもりでいた。しかし、情熱だけでは人の命を救えないと思い知った。
「この仕事に、ここまででいいというゴールはありえない」
それ以来、宮本は、ひたすら自分を追い込むようになる。

写真20歳の宮本。情熱と使命感のかたまりだった。


瀬戸際でも、自分で考える

宮本は、部隊のさらなるレベルアップをはかるために、特別な訓練を計画した。大規模地震が起こり、多数のケガ人が出ているという想定のもと、宮本の指揮で全隊員が動く。
目指すのは、自分の指示を待ち、それを忠実に遂行するだけの隊ではない。その持ち場持ち場で、隊員自らが、どうすれば与えられたミッションを早く的確にこなせるか、自主的に考え、行動に移せるチームだ。自らの行動が命をも左右する極限の状況で、自ら判断し、即座に行動するのは、鍛え抜かれた隊員といえども難しい。壁をこえようともがく隊員達を、宮本はどのように導くのか。

写真瓦礫の中からの救出訓練。まさに本番さながら。


プロフェッショナルとは…

どれだけ技量をつければいいのか、どれだけ知識をつければいいのか、達成する域というのは、いまだにわからないのですね。ただ、そこまで引き上げていこうという自分の気持ち、それを持ち続けることだというふうに思っています。

宮本和敏

The Professional’s Tools

防火服

ズボンや防火帽などを合わせると、その重さは10キロ以上。空気ボンベを背負うと、装備は約20キロとなる。

写真


二酸化炭素探査装置

二酸化炭素の濃度を計測できる。瓦礫の下などに生存者がいた場合、その呼吸を感知し、位置を特定するのに役立つ。

写真


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