スマートフォン版へ

メニューを飛ばして本文へ移動する

これまでの放送

第80回 2008年3月4日放送

信頼の上にこそ、組織は輝く サッカークラブ ゼネラルマネージャー・祖母井(うばがい)秀隆


GM=Grand Mother おばあちゃん

強い組織を作るためにGMはどんな役割を果たすべきか。祖母井はそのあるべき姿を自分の名前になぞらえ、「Grand Mother(祖母)」であると言う。組織には、離れた場所から見守る「おばあちゃん」のような存在が必要だとの信念だ。
祖母井は、練習中は何も言わずじっと選手を観察し、ひとりひとりの体調やチームの雰囲気を把握することに務める。サッカーに関しては、現場に一切口をはさまないのが祖母井の流儀。自分が選んだ監督にすべてを任せ、現場を信じて「おばあちゃん」のように見守る。
一方で、選手に対しては整理整頓やあいさつの励行をやかましく言い、人としてきちんとすることを求める。「ふだんの生活がルーズだったら やっぱり試合でもルーズになる。サッカーの場合ちょっとした数秒のルーズが 失点につながり負けてしまう」というのが祖母井の考えだ。

写真最初から最後まで練習を見守る


競争が組織を強くする

強い組織を作るために、祖母井みずからが先頭に立つ大事な仕事。それが選手の補強だ。
祖母井は補強の目的を、単に有能な選手を獲得することだけには置いていない。
新しいライバル選手が入ることによって、今いる選手が発憤し、さらに自分の力を伸ばす。そうした環境を作り出すことが、自らの役割だと考える。
Jリーグ「ジェフ市原」でGMを務めていたころ、祖母井は、レギュラーポジションを確保した巻誠一郎選手(のちのサッカー日本代表)に対してさらなる成長を促そうと、ライバルとなる外国人選手を獲得したこともあった。
さらに、競争によって選手のモチベーションを逆に落としてしまわないようにすることも大切な仕事だ。例えば、選手本人に対して「成長を望むからこそ競争させるのだ」と、ライバルを補強した意図を説明し、納得して仕事ができるように配慮することもある。

写真セルビアのデオグラードで選手の移籍交渉に臨む


筋を曲げない

さまざまな思惑がぶつかり合うスポーツビジネスの世界では、つねに激しい駆け引きがおこなわれる。こうした一筋縄でいかない世界だからこそ、祖母井は正論にこだわり、筋を曲げることを決してしようとしない。
1月のある日には、移籍候補の選手側が、練習に参加するのに飛行機代を出してくれと言ってきた。このクラブの方針では、練習段階での飛行機代は選手側が負担することになっている。ただし、相手が期待の選手だけに、飛行機代を負担してまで練習に参加させるか、判断が問われる場面だった。
しかし祖母井は即座に交渉を打ち切った。
筋を曲げず、ぶれないことが、リーダーとしての信頼につながり、それを積み重ねることこそが、強い組織の基礎となると祖母井は考えている。

写真


プロフェッショナルとは…

プロフェッショナル・・・・。私にとってプロフェッショナルというのは、私の課題、今置かれている課題に対して100%努力することだと思います。

祖母井(うばがい)秀隆

The Professional’s Tools

フランス語のテキストとノート

祖母井のカバンには、フランス語のテキストとノートが入っている。
フランス語の勉強をはじめたのは、グルノーブルにやってきたここ一年のこと。仕事上の会話は、留学時代に身につけたドイツ語と英語で行うが、少しでもスタッフやサポーターとコミュニケーションを取ろうと、暇を見つけてはフランス語の勉強をしている。
しかしノートの中をのぞくと、「敗北」「負けた」など、ネガティブな言葉ばかりが並んでいた。「勝った時には問題がないが、負けた時には説明する必要がある」。言葉の一つ一つから仕事のリアリティが伝わってくる。

写真


スカウティングノート

祖母井は週末ともなると、サッカーの試合を視察に行く。行き先は、フランス国内にとどまらず、ヨーロッパ各国やアフリカにまで及ぶ。その際にメモを取るためのものが、手のひら大のノート。選手のポジションをメモしやすいように、各ページにあらかじめピッチの図が印刷されているものだ。
メモには、「ヘディング強い」「中央の方が恐ろしい」など、選手の特徴が簡潔な言葉でつづられている。

写真


関連情報


Blog