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これまでの放送

第68回 2007年11月13日放送

魂の職人 希望の道具 義肢装具士・佐喜眞(さきま) 保


希望を与える道具

佐喜眞が作る義足や義手、装具。それは単に、体の機能を補う生活の道具ではない。
人生を前向きに生きるための「希望を与える」特別な道具だ。
特に注目されているのは、全国に多くの患者がいるといわれる「変形性膝(ひざ)関節症」の患者のために開発した独自の装具。従来のものより「格段に軽く、動きやすい」のが特徴で、評判が評判を呼び、ひざの痛みに苦しむ人々が佐喜眞を訪ねて全国からやってくる。
痛みがつらく、人生を楽しめなくなっていた人に、力を与える。それが佐喜眞のめざす装具だ。

※「変形性膝関節症」は、老化などで足の筋力が衰えることで生じる症状。
軟骨がすり減り、骨と骨がぶつかり痛みが生じる。
※独自に開発した膝装具は、01年には「文部科学大臣賞」、05年には「ものづくり日本大賞」受賞している。

写真装具づくり


もっと、もっとできるはず

佐喜眞自身は、幼い頃に結核性脊椎(せきつい)カリエスを患い、障害と向き合う人生を送ってきた。26才の時には、背骨を矯正するために骨の一部を摘出するという大手術を受け、1年に及ぶ苦しいリハビリを体験した。
しかし佐喜眞はある時、医師にこう言ったという。「もう一回手術をしてください。あと2センチ大きくなりたい」医師は答えた。「危険な手術をもう一度なんてばか野郎。今のままで十分だ。」振り返って佐喜眞は語る。「でも障害者って、そういうものさ。」

もっともっと我慢せず豊かな人生を送りたい、その障害者の本音がわかるからこそ、佐喜眞は少しでもよいもの、本当に必要とされるもの作りたいと考えている。

写真闘病時代の写真


弱いからこそ、作り続ける

振り返れば佐喜眞の人生は、壮絶なコンプレックスとの格闘だった。
障害が原因で、思うように友だちと遊べず寂しい思いをした幼少時代。障害に負けまいと鉄工所での力仕事にがむしゃらに打ち込んだ10代、20代。
義肢装具士の仕事と出会ってからも、苦しんだ。思うように仕事が増えず、新たに乗り出した事業では失敗。多額の借金を抱え、仕事に身が入らなくなった。
そして今もそのコンプレックスは消えない。「自分の体を見て『小さい』と遠慮無しに言う子どもの目や言葉が怖い」と佐喜眞は語る。

かつて役に立たなかった自分。そして今も弱い自分。
そんな弱い自分だからこそ、ただひたむきに作り続ける。

写真島袋さんと義足


プロフェッショナルとは…

必要とするものを求める人がいるかぎり 絶対逃げない やり続けることだと思います。

佐喜眞(さきま) 保

The Professional’s Tools

石こうの足型

患者の足にギプスを巻いて採った型に、石こうを流し込んで作ったもの。この足型をもとに、装具の矯正具合を調整する。
佐喜眞のように経験を積むと、この足型を見るだけで、病気の症状から普段運動をしているかなどの生活の様子までわかるという。

写真


骨組み

飛行機などの材料にも使われている軽量の金属「ジュラルミン」で作られた装具の骨組み。
身につける患者は、体力のない人が多いので、いかに軽いものを設計するかということに心を砕いている。
製作段階では、患者一人一人の状態に合わせて、足をどこまで矯正するか、適切な度合いを見極めるのが、プロの技となる。

写真


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