スマートフォン版へ

メニューを飛ばして本文へ移動する

これまでの放送

第67回 2007年11月6日放送

愛と覚悟のヒットメーカー 漫画編集者・原作者 長崎 尚志


愛と、覚悟

日本で数少ない、フリーの漫画編集者・原作者である長崎。漫画家と本気でアイデアをぶつけあい、二人三脚でストーリーを作り上げる「陰の仕掛け人」として、企画やシナリオ制作、宣伝戦略まで「絵を描く以外すべてに関わる。
その長崎が20年以上前から付き合い続けるのが、漫画界のスーパースター・浦沢直樹だ。現在、月1回で連載をしている人気漫画「PLUTO」の打合せは、まさにふたりの魂のぶつかり合い。主人公のひとりである人間型ロボットが銃で撃たれた次の回、ストーリーをどう続けるか、アイデアの応酬が行われた。浮かび上がったのは、残された妻のロボットの悲しみを描くこと。ネームと言われる原稿の下書きや、文字の校正に至るまで、長崎は細心の注意と意欲をもって挑んだ。
その長崎が常に胸に刻むのは、漫画家と同じ「愛と覚悟」をもって作品作りに臨むこと。世界で最初に漫画を愛し、そして世界でふたりだけでも「面白い」と信じ抜く覚悟がなければ世に送ることができないと、長崎は考える

写真原稿を見て、すぐに意見を伝える


志を共有する

「主役」である漫画家をもり立てるのが仕事という長崎。作品を作り上げる中で大切にするのは、漫画家と、作品に対する志を共有することだ。
長崎が原作者として手がけるアクション漫画「ディアスポリス」。テーマである独特のもの悲しさを強調するために、長崎は、主要キャラクターのひとりが死ぬという、大胆な展開を考えていた。しかし、問題は、一緒に組む漫画家がどう思うかだ。気乗りしないものを無理に書かせても、決してよい作品はできないと長崎は考えていた。
ある日、意見を聞くため、漫画家・すぎむらしんいちの仕事を訪れた長崎。キャラクターに対する思い入れを語るすぎむらを前に、長崎はみずからの思いを話し始めた。やがてすぎむらは、キャラクターの死ぬ場面をイメージし始め、「描きたい」と長崎に告げた。

写真直接会うことで、漫画への熱意を確認し合う


修羅場で粘りきれるか

この夏、長崎は新たな挑戦を始めていた。自分の原作でデビュー前の新人に漫画を描かせ、出版社に持ち込む。通常、出版社の主催する新人賞を経て、担当編集者に育てられるのが漫画家デビューへの道だが、長崎はフリーの自分が新人を発掘することが、漫画界の間口を広げる一手になるのではないかと考えていた。
一緒に組む漫画家は、浦沢直樹のもとで10年アシスタントを務めていた坂田通。坂田の画力に見込みがあると考えた長崎は、歴史漫画の原作を坂田に提供した。何の後ろ盾もないまま出版社に持ち込むためには、他の追随を許さない高いクオリティが求められる。そこに至るまでに長崎が見極めようとしていたのは、坂田が自分に足りないものに向き合い、度重なる手直しの中で粘りきれるか。
だが、できあがった下書きを見たとき、長崎はひとつの懸念を抱いた・・。

写真例え新人であっても、全力で向かい合う


プロフェッショナルとは…

ひとつの仕事を終わると、もう次はこれ以上のものはできないんじゃないかってよく思うんですよ。つまり過去の栄光や実績にすがらない人。それをすがらないから、次があると思うんです。

長崎 尚志

The Professional’s Tools

カメラ

漫画編集者・原作者の長崎にとって大切な仕事のうちのひとつが、漫画家が絵を描くときに参考にする資料写真を撮ることだ。背景やその土地特有の食べ物、テーブルセットなど、世界中をみずから巡り、その写真を撮ってくる。
原作を書く際の自分のイメージを伝えるとともに、ひとりひとりの漫画家が好むコマ割り、構図を考えながら写真を撮影する。まさに漫画家の目となる「黒衣(くろこ)」としての仕事だ。

写真使うのは、フィルムのカメラとデジタルカメラの2台


関連情報


Blog