スマートフォン版へ

メニューを飛ばして本文へ移動する

これまでの放送

第63回 2007年9月18日放送

地の果てにこそ、真実がある 生物学者 長沼毅


辺境生物学

長沼の研究テーマは生命の起源を探ること。そのために、長沼は辺境の微生物たちに注目している。かつて地球上の生物は、煮えたぎるマグマや氷に閉ざされる氷河期といった環境の激動を乗り越えてきた。現代でも、火山や北極などかつての環境に近い過酷な辺境を調べれば、生命の起源を解き明かすヒントが見つかると考えている。
長沼は、極端に乾燥した砂漠や、酸素の無い地底、光の届かない深海などの辺境を次々に調査。その結果をまとめて、辺境生物学という新しいジャンルを生み出した。

写真北極を調査する長沼。フィールドは常に過酷な辺境だ


思いこみを捨て 思いつきを拾う

長沼は一年の半分を調査などの出張に費やす、現場主義者だ。大分の火山での調査でも、長沼は高温の水蒸気や有毒なガスに耐え、サンプルの採取を行った。
2時間かけてサンプルを取り終えて、帰り支度を始めた長沼だったが、帰り道に突然、予定になかったサンプルを取りだした。「ひらめいた」と言う。決めた予定を、現場で次々に変え、ひらめきを大切にする。それが長沼の調査の流儀だ。
長沼は語る
「思いこみすると、何かを得るチャンスを減らしちゃう。直観が支えているのに、最初に決めた事しかやらないと、大事な事を見落としちゃう。これがもったいない。」

写真ひらめきや思いつきを大切に長沼は予定を軽々と変更する


高い山こそ、ゆっくり登れ

長沼は、仕事の間でも楽しむことを意識的に行う。調査で見つけたお湯が沸く場所は、自らスコップで堀り、温泉にして入った。 長沼が挑むのは、「生命の起源」という壮大な謎。一生かけても解けないかもしれない科学界最大の謎の一つだ。一生をかける仕事では、力が入りすぎていては、とてももたない。肩の力を抜き、リラックスして楽しむ事が、長く仕事を続け、高みにたどり着けると信じる。

写真調査中に見つけた天然にわいた温泉でリラックスする


空振りは、思いきり振り切れ

生命の起源を追い求め、長沼は北極圏の調査に向かった。狙うのは、過酷な環境を生き抜く事ができる最強の微生物だ。10日間の調査を終え、大量のサンプルを取ってきた長沼は、その中から、狙う微生物を抽出する作業にとりかかった。抽出には、塩分や温度などさまざまな条件を加えて行うが、これまでの成功例にあてはめても、今回は全く生命の気配が感じられない・・・。調査は失敗かと思われた瞬間、長沼は、これまででは考えられないような、大きな条件の変更を試す。全くあり得ないと思われる条件でも、とにかくやってみる。それが真実をあぶり出す唯一の方法だ。

写真これまでの成功例にとらわれず、長沼は大胆に条件を変更した


プロフェッショナルとは…

 やはり仕事をしていくと、行き詰まったり方向を失ったりするんですよ。そのときに原点に返る、そういう原点を持っている人がプロだと思います。

長沼 毅

The Professional’s Tools

調査道具とヒップフラスコ

長沼が調査に持って行く道具はシンプルだ。サンプル瓶やサンプルに合わせて使い分けるひしゃくやハンマーなど、10種類ほど。その中で一際異彩を放つのが、お酒を入れるヒップフラスコ。長沼は各地の辺境を旅するたびに、現地のお酒をその中に入れる。
寒い場所では体を温める役目も果たす。常にリラックスを心がける長沼ならではの、道具の一つだ。

写真写真


関連情報


Blog