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これまでの放送

第48回 2007年4月17日放送

イヌは人生のパートナー 盲導犬訓練士・多和田悟


人間語ではなく、イヌ語で話す

まるで会話をするように、イヌを自在に操る多和田の様子から、多和田のことを人は「イヌ語を話す」と表現する。だが、実際に言語としてのイヌ語を話しているわけではない。多和田がいう「イヌ語を話す」とは、人間の言葉を押しつけるのではなく、イヌにわかるように意思を伝えること。そのためにはイヌをよく観察する。全体の雰囲気、耳の位置、しっぽの位置、表情のかたさ・ゆるさなどを見てイヌの状態を分析し、イヌができることからさせていく。小さな成果を積み重ねて行動に結び付けていくことが、「イヌ語を話す」ということだ。

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ほめるには、タイミングがある

多和田は、訓練するとき「グッド」というほめ言葉をよく使う。イヌに命令を出し、その行動をイヌが示したときなどに使う。イヌが行動を学習するときには、ほめるタイミングが重要だと多和田はいう。例えば「シット」という命令語でイヌを座らせる場合。イヌが座ろうと考えて頭を持ち上げた瞬間に、「グッド」とほめる。その瞬間にほめることで、イヌにその行動が正しいことを教えるのだ。

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盲導犬=人生のパートナー

盲導犬は、歩行時に視覚障害者を安全に快適に誘導する役割を担っている。また同時に、ともに生活して心を支える、大切な存在だと多和田は言う。「盲導犬は、いつも手を伸ばしたらそこにいる、温かい存在です。『おい』って言ったら、『何?』って聞いてくる、生きた相棒、パートナーでもあるわけです。」視覚障害者が豊かな人生を送るための手助けをすることが、盲導犬訓練士だと多和田は考える。

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プロフェッショナルとは…

自分自身の生きる上での信念を持っている人。だから具体的にはブレていいんです。ブレても帰るところを持っている人が、プロフェッショナルだと思います。

多和田悟

The Professional’s Tools

視覚障害者を安全に快適に誘導する盲導犬の仕事の基本は、「角で止まる」「段差で止まる」「障害物をよける」の3つだと多和田は言う。目的地までの道順は、人間が地図を頭の中に描く。そしてイヌに「まっすぐ」「右」「左」などの指示を出して歩くのだ。歩行はイヌと人間の共同作業だ。

障害物をよける

スタジオセットの電柱に見立てた柱を、右側によけて人間を誘導する。柱の右側を通るか左側を通るかは、イヌが自分で判断する。壁と柱の透き間をイヌは通れるが、人間が柱にぶつかってしまうことをイヌが判断して、右側によけることを選択している。

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角で止まる

角を発見すると、イヌは左に体を向けて止まる。この動きが、イヌに装着されているハーネスを通じて手から伝わり、角であることを人間が認知できる。

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段差で止まる

段差を見つけると、イヌは一段目に前足を乗せて止まる。止まったことと、ハーネスの位置が上がったことを感じて、人間が段差を認知する。多和田は、ハーネスが上がった感触で、どのぐらいの高さの段差かもわかるという。

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