担任を持つ鹿嶋は、「学活」や「総合学習」の時間を使って、独自のクラス作りを行っている。生徒同士にコミュニケーションのきっかけを与える「エンカウンター」(構成的グループエンカウンター)と呼ばれる授業だ。もともとはアメリカで開発された考え方を、日本の教育心理学者・國分康孝氏が持ち込んだ。鹿嶋はそれを現場で実践した先駆者の一人だ。
例えば、「愛し、愛される権利」「きれいな空気を吸う権利」「遊べる・休養できる時間を持つ権利」など鹿嶋が提示した10の権利のうち、何が一番大事かを生徒達に話し合わせる。6人ほどのグループに分かれ、それまで話をする機会の少なかった生徒同士も意見を交わす。大事にする権利も、その理由もそれぞれ違う。話し合うことで、互いの価値観を知り、関係が深まっていく。
鹿嶋がこうした授業を取り入れる背景には、自身の教師生活の中で感じている「生徒の変化」がある。最近の生徒達は、コミュニケーションの力が落ちているというのだ。人付き合いが苦手で、ほっておくと、なかなかクラスメートと関わろうとしない生徒もいる。核家族化が進み、地域社会の結びつきが薄れている昨今、他人と関わる場として、学校の役割はますます大きくなっていると、鹿嶋は考えている。鹿嶋は、さまざまなエンカウンターのプログラムを駆使し、生徒同士を関わらせる。生徒一人一人が絆(きずな)の糸でつながっていれば、いじめや学級崩壊は起こりえない。生徒同士のネットワークが張り巡ったクラスを、鹿嶋は常に目指している。