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これまでの放送

第43回 2007年3月1日放送

シリコンバレー、疾風怒濤(しっぷうどとう) 技術者 渡辺誠一郎


頭をマッサージする

問題に直面した技術者は、ときに煮詰まってしまうこともある。視野が狭くなって原因を決めつけてしまうこともある。その「決めつけ」こそが、技術開発の最大の敵だと、渡辺は考える。「決めつけ」にかかった部下を前にしたとき、渡辺は、あえて突拍子もないことや常識ハズレの提案をする。そのこころは、頭をマッサージするということ。部下が柔軟な発想ができるように、冗談めいた提案をふっかけ、ほかに手段がないか考えさせるのが、最高技術責任者としての渡辺の流儀だ。

写真繊細な部品を押してみろと提案する渡辺


“破壊分子”こそ、宝

人材の流動性が極めて高いシリコンバレー。ベンチャー企業の成否は、どのような技術者を会社に引き込むかで決まると、渡辺は考える。採用にあたっての渡辺の最大の流儀は、「破壊分子」を重用すること。革新的な技術を生み出す能力を持った人材は、ときに組織全体の方向性とは違うことを勝手に進めたり、既成概念を壊すような提案をすることもある。しかし、彼らの破天荒な発想を伸ばすことこそが、未来の技術を生み出すことにつながると、渡辺は信じる。

写真渡辺の部下の採用基準は独特


マドル・スルー (muddle through)

シリコンバレーの流儀とも言われる、この言葉。まるで、泥の中に放り入れられたかのように、上下も左右もわからなければ、解決策も見当たらず、出口がどこにあるのかさえも見えない。その泥の中から顔を出すためには、頭で考えているだけではだめで、体を動かし、もがきながらも行動に移さなければならないと、渡辺は自身の経験を振り返って言う。起業直後に襲いかかる極めて困難な状況をマドル・スルーしながらクリアした者だけが、シリコンバレーでは生き残れる。

写真シリコンバレーの成功者が、皆、通る道


プロフェッショナルとは…

もう、恋愛感情みたいなこと、思って、思って、思い続けて、それが自分の中ででき上がっているような気になるまで、ずっと、思い続けてビジョンをつくれる人だと思います。

渡辺誠一郎

The Professional’s Tools

デジタルカメラ

渡辺のかばんには、いつもデジタルカメラが入っている。しかも、何台も。スタジオ収録の日には、3台持ち合わせていた。そして、望遠や顕微鏡レンズも持ち歩く。例えば、望遠のレンズを取り付けて撮影するのは、桜の花びらなど。ほかにも、食べ物や空、景色や鳥。ひとりのユーザーとしてデジタルカメラでどういうことができるか、探索を欠かさない。

写真望遠レンズを取り付けたデジタルカメラ


パソコン

ベンチャー企業の最高技術責任者としての渡辺の主な仕事は、会社の技術開発の大方針を決めること。そのために使うのが、パソコンだ。例えば、「良い写真」という名前のファイル。人を感動させる写真とはどういうものなのかを考えるためにキーワードをばらまき、その周辺に関連する技術を書き込む。このファイルは、実に6、7年に渡って、少しずつ書き足しながら更新している。渡辺のその間の思考が積み重なって一枚のイメージで表される。

写真渡辺の「頭の中」と呼ばれるファイル