スマートフォン版へ

メニューを飛ばして本文へ移動する

これまでの放送

第40回 2007年2月8日放送

出過ぎた杭(くい)は誰にも打てない コンピューター研究者・石井裕


オリジナルこそ、命

MITの教授は常に競争にさらされている。実績があっても大きな成果を生み出し続けなければ、生き残れない熾烈(しれつ)な現場だ。その中で石井が最も重視しているのは、研究のオリジナリティ。既にある研究の改良や性能の改善は、決して行わない。誰もやっていない新しい研究を目指し、石井は挑戦を続ける。

写真石井の研究は常にオリジナリティにあふれている


WHY?(なぜ)

ともに研究を行う学生たちと議論をする時、石井は「WHY?(なぜ)」と何度も問う。「なぜ?」という問いは、その研究の根本を問いかける質問だと考えているからだ。
繰り返される問いかけにきちんと答えられなければ、まだそのアイデアは十分に練られていないと石井は判断する。アイデアを磨き、インパクトのある物にするために欠かせない、大切な問いかけだ。

写真石井は、議論をするとき、何度も何度も同じ問いかけを行う


自分は凡人

天才たちが集うコンピューター業界。その中で石井は、自らを特別な人間だとは考えていない。むしろ凡人であると考える。天才たちの中で認められるため、石井は同僚の2倍働き、3倍の成果を出す事を自らに課している。MITメディアラボで最も忙しく働く男、石井はそう呼ばれている。

写真石井は研究所の誰よりも努力を惜しまない


越えるべき壁は、自分

研究者は自分の考えたアイデアを愛する。しかし、そのアイデアを本物の技術にまで高めるためには、そのアイデアを客観的に見つめる視線が必要だと石井は考える。
そこで、最も大きな壁になるのが「自分自身」だ。自らのアイデアにプライドを持つ研究者たちにとって、弱点を認めるのは難しい事だ。しかし、自らのプライドを捨て、自分に打ち勝つために、石井はあえて厳しい言葉をぶつける。

写真自分のアイデアを愛するあまり客観的に見られない学生に、石井はあえて厳しく接する


プロフェッショナルとは…

自分がこの世からいなくなったあと、その未来の世界にどういうよい影響を与えられるか、インパクトを残せるか。そこまで真剣に考えられる人だと思います。 

石井裕

The Professional’s Tools

かばんの中身

石井のかばんには常に多くの物が入っている。ノートブックのコンピューターや論文などの書類を移動中でも見ることができるようにするためだ。
さらに、石井はコンピューターだけには頼らない。手書きのノートや手帳も常に持ち歩く。
思いついたことをすぐにメモし、絵を描くことができるのは、やはり紙。それが石井がアイデアを生み出す支えになっている。

写真写真


タンジブルのコンピューター装置

石井が提唱する「タンジブル」という概念は、「さわれる」という意味を持つ。その研究から生まれたこのテーブル型コンピューターは、パックと呼ばれる丸い駒を実際にテーブルにおいて動かすことで、操作する。この写真のコンピューターはネットワークで問題が起きたとき、どこに問題があるか、どうやって解決すればいいかを複数の人間がテーブルを囲んで議論しながら行うもの。未来のコンピューターの一つの可能性を示すものと評価された。

写真石井の研究から生まれたテーブル型コンピューター
写真パックと呼ばれる丸い駒を動かして、コンピューターを操作する