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これまでの放送

第39回 2007年1月25日放送

がけっぷちの向こうに喝采(かっさい)がある  指揮者・大野和士


すべてにおいて 相手を圧倒しなければ 人はついてこない

大野は、25歳でドイツに留学して以来、ヨーロッパを中心に活動を続けてきた。言葉も文化も違う日本人が認められるのは並大抵の事ではない。少しでもハンディがあると思わせたら認めてはもらえない。大野は、その厳しい世界を指揮者としての力量だけで勝負してきた。新しい楽曲を手がけることごとに、膨大な資料を原語で読み込み、作品への理解を深める。そして英語、独語、仏語、伊語を自在に使いこなし、自分の作品の解釈を、歌い手や楽器奏者たちに伝える。

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登るべき山を示す

けいこの場で、大野はまずこれから取り組む作品の解釈を、具体的な言葉で奏者や歌手に伝えることを大切にする。オーケストラや歌い手たち全員が、同じイメージを持ち、目指すべき音楽的な高みを共有するためである。どんな音色が必要なのかはあえて言わない。大野は、100人が出す音を聞き分け、自分のイメージとずれていれば、ピンポイントでその演奏者に情景や意味を伝えていく。

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一人一人を解放する

ステージの上で指揮をする際、大野はことさら大きな身振りをしない。指示されて出すのではなく、演奏者たちが自分の最も出しやすいやり方で出した時の方がいい音になると考えるからである。事前の練習では、自分の作品のイメージを伝え、細部に至るまで磨きをかけていくことに徹底的にこだわる。しかしその上で、大野は、本番では、一人一人の能力を解き放つことに重きを置く。ことさら大きな身振りはしない。「なきかのごとくある」、それが指揮の極意だと大野はいう。

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プロフェッショナルとは…

どんな状況になろうとも自分のベストを尽くすべく、その試みを最後まであきらめずにすることですね。

大野和士

The Professional’s Tools

オリジナルの指揮棒

指揮者・大野の指揮棒はオリジナル。棒の部分は市販のものを使うが、グリップの部分は、なんとワインのコルクの栓を自分で削って使っている。自分で削ることで、手にしっくりとなじむ指揮棒に仕上げる。また大野は常に、指揮棒を複数持ち歩く。棒の部分が木でできているために、手から滑り落ち、折れてしまうこともあるからだ。

写真ワインのコルクを削って作ったグリップ


楽譜

大野は常に楽譜をカバンに入れて持ち歩く。オペラの楽譜ともなると、大きく、そして分厚くなり1冊数キロの重さのものも・・・。 大野は同じ楽譜を長年使う。ぼろぼろになっても背にテープをはりできるだけ長く使う。書き込みは常に鉛筆で行う。作品と向きあい続ける中で新たな解釈を見いだした時、直せるようにするためだ。また大野は、同じ楽譜を長年使い続ける。そうすることで書き込みや、ソースのシミなどの汚れの位置とともに音楽が記憶されていくのだという。

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