第34回 11月30日放送 : ユニセフ タジキスタン代表・杢尾雪絵 / 2007年4月24日公開 
「プロフェッショナル」で開いた扉

NHKプロフェッショナルでは、ユニセフの事業内容を的確にしかもわかりやすく日本の皆さんに伝えていただいて、とても感謝しています。”子供の権利を守る”というのは、聞いただけではよくわかりにくいことですし、私のユニセフでの仕事は、いろいろな交渉がいろいろな人を相手にかなり複雑に絡み合っていて、実はちょっと見ただけでは大変わかりにくいものだと思います。子供を助けるための単なるチャリティーではない、ということがどれだけわかっていただけるか心配でもありました。タジキスタンでの1か月に及ぶ密着取材中は、実は私も、こんなにいろいろなこと話さないといけないの~、という感もあったのですが、ディレクターの寺岡さんをはじめとするチームの方は、熱心なだけではなく、この仕事の本質を見抜こう!という強い信念を持っておられて、まさにプロフェッショナルそのもの。番組を見たときは、私のユニセフの仕事への思い入れがそのまま伝わっているのがわかり、自分で言うのも変ですが、私も感動しました。裏話になりますが、NHKクルーの皆さんはタジキスタンではおなかをこわされたり、車がすぐに故障したり、取材の予定が頻繁に変わったりで、日本では通常問題にならないような大変なことがたくさんあったと思います。そんな困難さにもめげずにすばらしい番組を作っていただいたのには、大変感謝、脱帽です!

さて私のユニセフでの仕事を取り上げていただいたことで、開いた扉がいくつかあります。
ひとつめは、当然のようなことではありますが、大変よい反響を視聴者の皆さんからいただき、いろいろな方たちが、私たちの仕事を応援して支えてくださっているということに、改めて励まされました。ありがとうございます。
ふたつめは、日本を離れてからもう20年近くなりますので、遠く長いこと音信不通になっていたかなりの数の友人から連絡があり、交流が復活したこと。これはすばらしいボーナスをもらったようなもので、とても嬉しく思っています。
みっつめは、番組で取り上げていただいた”いつも心に青空を”という私の信念のようなものが、客観的に見ることで、改めて自分の中でもさらに意義が深くなったことです。以前に増して、この信念を元に困難な場面も克服できるような気になったことでしょうか。
総合してみれば、この番組出演をきっかけに、ますます私の仕事への励みをいただき、私の中にみなぎるパワーが出てきたというところです。

タジキスタンでのその後ですが、番組で取り上げられた保健省との交渉は、昨年11月の大統領選のあとに内閣が一新して、保健大臣が新任者に代わってしまい、今年に入ってからまた新たに予防接種に関する予算の交渉と始めたという経過があります。しかしその一方で、ユニセフと世界銀行の提携で、タジキスタンの困難な状況を踏まえてさらに支援の枠を増やすという話が出てきており、何とか資金繰りはできるかな、という見通しも立ってきました。三歩進んでは一歩下がり、という感じで、なかなか思うとおりには物事は進みませんが、それでもチームは前向きにがんばっています。

プライベートでは、タジク人のパートナーと昨年12月に入籍結婚をしました。東京の実家の近くの神社で御祓いをしてもらいましたが、彼にはエキゾチックな体験だったようです。私は半分タジク人になったようなものだね、などとこちらでは言われています。近い将来別の赴任地に移ることもあるかと思いますが、タジキスタンとのお付き合いは人生のお付き合いになる模様。

こちらタジキスタンでは、長く寒い冬が終わったと思ったら、4月に入ってからはもう30度を越す真夏の暑い日が続いています。ドゥシャンベの街では、青く広がる空を背景に木々の緑が鮮やかに美しく、とてもすがすがしい毎日です。これをきっかけに、日本の皆さんがタジキスタンのような見知らぬ国のことも、知っていただけるようになれば、とても光栄です。こちらの子供たちの暮らしは、貧困から立ち直るにはまだまだ長い時間がかかりそうですが、それでも子供たちの笑顔は何にも代えがたいもの。そんな子供たちの笑顔を支えにこれからも邁進です!