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これまでの放送

第34回 2006年11月30日放送

いつも心に青空を ユニセフ タジキスタン代表・杢尾雪絵


子どもたちは、待ってくれない

 旧ソビエト連邦から独立した直後に、5年にわたる内戦を経験したタジキスタン共和国。国土が荒廃したこの国では、子どもの13人に1人が5歳まで生きられない。死亡する子どもは、年間2万人以上にのぼっている。
杢尾は、言い切る。「こうした状況を変えるのは、大人の仕事」だと。
ユニセフの職員となって11年。杢尾は、コソボなど困難な地域ばかりを回ってきた。こうした紛争の陰で虐げられるのは、いつも子どもたちだった。
「幼い命が犠牲になる前に、一刻も早く手を打ちたい」その思いが、杢尾を仕事に駆り立てる。どうすれば子どもの命と健康を守れるか。多いときには一日8つの会議をはしごし、「一日36時間あっても足りない」と語りながら、杢尾は日々、精力的に働き続けている。

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いつも心に青空を

 杢尾の最も重要な仕事は、タジキスタン政府との協議。だが、発展途上のこの国では、国家予算は主に経済政策や治安維持に割かれ、子どもの健康に対する意識は高くない。掲げる理想と現実とのギャップに神経をすり減らす日々が続いている。こうした中で、よりどころとしている言葉がある。「いつも心に青空を」
どんなに絶望的な状況になっても、投げやりにならず希望を捨てない。そのために、出口が見えない時こそ、自分を俯瞰(ふかん)して見ようとする。こうした杢尾の思いが込められた言葉だ。
かつてコソボでの支援活動の際、何もかもうまくいかずに心が折れかけた杢尾。その逆境の中でつかみ取ったのが、心の中の「青空」を持つという流儀だ。それが、「うまくいかないのが当たり前。でもどんな困難な状況もいつかは変えられる」と力強く言い切る今の杢尾の仕事を支えている。

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一歩目は、小さくてもいい

 9月、ユニセフの事業に協力を拒むある自治体との協議があった。しかし相手側の責任者である市長は、杢尾の協力依頼に対して、真っ正面から答えようとしない。
こうした時、杢尾が大切にしているのが、「一歩目を踏み出す」ということ。どうしたら相手が最初の一歩を踏み出してくれるか、その具体策を考える。
この日は考えた末、事業をすぐに実施することにこだわらず、その準備段階としてまずは調査を行わないかと、もちかけた。結果、相手は「調査ならば」と受け入れた。政府や国際機関、NGOなど、さまざまな立場の人といっしょに仕事をするからこそ、無理を通さず、「できないことよりも、小さくてもできることを考える」というのが杢尾の流儀だ。

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プロフェッショナルとは…

やっぱり「信念をもって人間の仕事をする」自分の信じていることに忠実に、それに自信を持って仕事をするということかしら

杢尾雪絵

The Professional’s Tools

プロジェクト・ノート

かばんから出てきたのは複数のノート。同時にいくつものプロジェクトを統括する立場にある杢尾は、プロジェクトごとにノートを使い分けている。その数、10冊。
特徴的なのは、ノートに書かれた数々の図。どれも協議をしている最中に、他の出席者の目の前で書いたものだ。図解することによって、プロジェクトの全体像や議論の流れを、協議に参加している人たちに納得してもらうようなくふうをしている。
またところどころ、ノートの片隅には、かわいいイラストが。「子どものころから授業中よく落書きをしていたんです」と恥ずかしそうに語る杢尾。
メリハリをつけながら、杢尾は連続する会議を乗り切っている。

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