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これまでの放送

第20回 2006年7月13日放送

直感は経験で磨く 棋士・羽生善治


35歳の新境地

 常に将棋界のトップを走り続ける棋士・羽生善治(35)。25歳で前人未踏の7タイトル全制覇を達成してから10年。35歳になった羽生は、今新たな境地で将棋に挑んでいる。10代、20代のころと比べ、記憶力や反射神経は衰えたが、経験を積み重ねる中で培った「直感」や、勝負の流れを読む「大局観」などを生かして勝負することを心がける。ここ数年、対局中、いつも思い浮かべる言葉がある。「玲瓏(れいろう)」。
玲瓏とは、透き通り、曇りのないさま。対局中に襲われる不安や迷い、雑念を取り払い、澄み切った心で盤面に向かうよう、自らを戒める。
勝負の山場、一手のミスも許されない瀬戸際に立ったとき、羽生の手が震えた。羽生は、常に自分との葛藤(かっとう)に打ち勝つべく、プレッシャーと戦いながら、勝負に挑む。

写真30歳を過ぎ新たな気持ちで将棋に向かう羽生


才能とは、努力を継続できる力

 10代のころから、その才気を発揮し、天才と呼ばれる羽生だが、25才という若さで7冠達成という頂点を極めた後、漠然とした不安に駆られ始める。「この先どうなるのか」。
迷いとともに次第に戦績を下げ、2年前には、タイトルは1冠にまで落ち込んだ。そんな時、見慣れたはずのベテラン棋士たちが将棋に打ち込む姿を見て、羽生はあることに気づく。「才能とは、一瞬のひらめきやきらめきではなく、情熱や努力を継続できる力だ」。
「勝ち負けだけにこだわらず、生涯をかけ自分の将棋を極める」。羽生は今また、新たな境地で将棋に挑んでいる。

写真若手棋士の中で将棋の研究をする羽生


リスクなくして、成長なし

 4月15日。タイトル戦の予選。羽生は、小学校のころから戦ってきた同い年で同期の「宿命のライバル」、名人・森内俊之との対局で、20年の将棋人生で初めての、常識破りの一手を指す。「守りに入り、リスクを取らなければ、そこからは何も生まれない」。
息詰まる攻防の中、羽生は、最後まで果敢に攻め続ける。

写真果敢に攻めに出る羽生


プロフェッショナルとは…

やっぱりなんかこう揺らぎない人、揺らぎない人だと思っています。変わらないというか、核があるというか、信念があるというか、誇りがあるというか、つまり本当に大事にしているものを守り続けている、信じ続けているということではないかなあと思います。

羽生善治

The Professional’s Tools

扇子

羽生の仕事に欠かせない道具は、扇子。季節を問わず対局中、使う。手に持ってパチパチ鳴らすのが習慣。次の一手を考えている時のイライラやストレスを扇子にぶつけることで、思考に役立てているという。

写真


詰め将棋の本

羽生は、対局前、よく歩いたり散歩をするため、多くのものは持ち歩かず、かばんはできるかぎり軽くしている。ただ、よく持ち歩いているのが、詰め将棋の本。対局前に数問解くのが、スポーツ選手の屈伸やストレッチなどの準備運動のようなものだという。

写真