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第19回 2006年7月6日放送

新しいものは「衝突」から生まれる カーデザイナー・奥山清行


猛獣使い

 ゼネラルモーターズ(GM)、ポルシェと渡り歩き、世界の名だたる名車のデザインを手がけてきた奥山。現在は、イタリアの名門デザインスタジオ、ピニンファリーナ社に籍を置いている。世界中のメーカーから新車のデザインの依頼が殺到する「世界最高峰」のもの作りの現場だ。
 奥山はそこで、デザイン部門の最高責任者・デザインディレクターをつとめる。部下のデザイナーたちは世界各国から集まったエリートぞろい。個性とプライドという牙を持った「猛獣」たちだ。時には奥山のいうことも聞かず、仲間同士ですぐにケンカを始めるほどのどう猛さ。しかし人をひきつけるデザインを生み出すには、そのくらいの個性とアクが必要だと奥山は考えている。
 奥山は、その猛獣たちをうまく使って、新たなデザインを生み出していく。まさに「猛獣使い」だ。

写真奥山はデザインの本場イタリアで180人のスタッフを率いる。


衝突が本物を生む

 奥山は、必ず一つのプロジェクトに複数のデザイナーを関わらせ、コンペの要領で競争させる。最後に採用されるのはただ一人。デザイナーたちは個性をしぼり出し、自慢のアイディアスケッチを何枚も描く。
奥山は何度もミーティングを開き、提出されたデザインスケッチをチェックする。一切の容赦はしない。まずは一人一人のアイディアの欠点を洗い出し、徹底的に指摘する。一人の作業には、必ずつきまとう「自己満足」と「独りよがり」。創造的な仕事の最大の「敵」をつぶすためだ。さらに奥山はわざとトゲのある言葉を投げつける。デザイナーたちの反発も覚悟の上だ。プライドを刺激して挑発し、デザイナーたちの闘争心に火を付ける。
そうした「衝突」を繰り返すことで、デザインは少しずつ理想に近づいていく。奥山にとって「衝突」は、デザインを育てる、唯一の、そして最高の手段なのだ。

写真デザインミーティングでは、奥山の容赦ない言葉が飛び交う


逆境こそ成長のチャンス

 「衝突」が大きければ大きいほどいいデザインが育つ。そのために自分の力をみがくことはもちろん、部下たちのデザイン力を引きあげることも奥山の大きな仕事だ。
 奥山は今、来年の「ルマン耐久レース」に参加するレーシングカーのデザイン開発を依頼されている。レーシングカーのデザインは、奥山にとっても初めての挑戦。速さ、耐久性、そして美しさのすべてが求められる難しいプロジェクトだ。
 奥山は、このプロジェクトに、期待をかけて若手デザイナーを投入した。だが、いくら衝突を繰り返してもいいデザインを出してこない。さらに、クライアントへのプレゼンテーションが迫る中、大きな問題が発覚した。
 その時、奥山は全体のスケジュールを遅らせてまでも若手デザイナーに、デザインを考え直すチャンスを与えた。ギリギリの逆境を乗り越えたときこそ、本当の成長が得られるからだ。

写真若手デザイナーは、模型を前にデザインを練り直す


プロフェッショナルとは…

大変な質問で。プロっていうのは、僕は今日のためじゃなくて、本当に明日のために仕事が出来る人。自分のためじゃなくて、人のために仕事が出来る人。だから明日の人のために仕事が出来る人だと思うんです。

奥山清行

The Professional’s Tools

ペン

奥山は何を書くにもこのペンしか使わない。手紙も、サインも、もちろんスケッチもこのペンで書く。きれいなラインを引くために、そのペンを握っている感覚を手に覚え込ませるためだ。20年前にアメリカで見つけてからというもの、常に切らさないよう、500本単位で仕入れている。人に貸してくれと頼まれても、絶対に断る。ペン先のつぶれ具合が微妙に違ってしまい、きれいなラインが描けなくなるからだ。

写真ペン先は太め。慣れないと使いこなすのは難しい。


スケッチ

奥山は暇さえあればスケッチを描く。デザイン力は、描き続けていなければ、あっという間に落ちてしまう。世界から集まったエリートデザイナーたちを率いていくためには、部下たちをしのぐ圧倒的なデザイン力を維持する必要があるのだ。他の業種のデザイナーと比べても、スケッチを描く量だけは負けないと自負する奥山。1日に50枚描いたこともあるという。

写真


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