思いやりの光
2006年5月18日 ディレクター:ユーリ

5月18日放送のライティングデザイナー・内原智史さんの回を担当しました、ディレクターのユーリと申します。

今回は、内原さんのお人柄についてのお話を少々。1か月以上に及ぶ取材を通して、最も内原さんらしいと感じた出来事は、ロケの最終日、番組の後半に登場す る、島根県の玉造温泉でのことです。内原さんとの撮影を終え、番組制作スタッフだけで夜の景色を撮影するために外に残っていました。
すると、日ごろの行いが悪いのか、雨が降り出してきてしまいました。
カメラマンはカメラを、音声マンは音声機材を、ディレクターは三脚を持っているので、撮影スタッフ3人は、通常、撮影中は傘を差しません。
しかたなく雨のなか、しばらく撮影をしていると、携帯に電話が。内原さんからだ。
「今どこにいる?」「さっき別れた橋のところにまだいます」「じゃあ、ちょっとそっち行く」
なんだろう? 何か言い足りなかったことがあったのかな、と激しくなる雨のなかで撮影を続けていると、内原さんがやってきた。自ら傘を差し、さらに、手には撮影スタッフのための傘が3本。
「はい。濡れるよ」
なんと優しい人なんだろう。撮影スタッフなんかのために、わざわざ旅館に戻り、雨の中、傘を届けに来てくれる。実は正直に言うと、やっぱり、撮影機材を持 ちながら傘を3本も持つのは・・・ちょっと邪魔だったんですが・・・。でも、内原さんはそんな人です。気配りの人。思いやりの人。
密着取材でカメラを向けられるのは、ある意味、ストレスを感じることだろうと思います。日常の生活にはないカメラという異物と、赤の他人が3人ほど常に付 きまとうわけですから。しかも、一か月以上に及ぶロケで、その最終日。さんざんご無理をお願いし、ご迷惑をおかけしてきた、その撮影スタッフからようやく 開放されたと思われるのに、内原さんはそんなときでも、われわれのことを気にかけてくれていた。ささいなことですが、私はいたく感動しました。

取材相手の一流のプロが、一瞬見せる、何気ないしぐさや人間味あふれる行動。本当はそれこそを番組の中でとらえたいのですが、残念ながら、今回の「傘事 件」は、撮影していませんでした・・・。でも、内原さんのライティングそのものにも、その思いやりは表れていると思います。使う人の立場に立った優しいま なざしと、決して押しつけがましくない、浴びて心地良いあかり。そんな内原さんの「思いやりの光」を少しでも番組から感じていただければ幸いです。