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第12回 2006年4月20日放送

チームの力がヒットを生む 商品企画部長・佐藤章


チームは異種格闘技

 ヒットメーカー・佐藤章が抱える商品は200以上。社内の部下は30人。佐藤の商品開発のポイントは、“チーム”。1チーム、商品ごとに、20人程度。社員だけではない。社外のデザイナーやコピーライター、広告代理店の営業マンなど、会社の枠を超えてメンバーを集め、商品のコンセプトからパッケージ、さらには広告まで手がける。職種を超えて、全員で意見を出し合う、異色のチームだ。

写真 会社や部門の枠を越えて


情熱を伝染させろ

 佐藤の魅力は、まず、その熱さ。「プッシャーみたいな」「バーンって撮りたいわけよ」など、擬音混じりの言葉で、感じたまま、体全体で、自分の思いやイメージをメンバーに伝える。佐藤の熱気が伝染し、皆、その気になっていく。ちょっとでも、腑(ふ)に落ちないことがあれば、「次―、次―!」と、メンバーに容赦なくダメ出し。刺激を与え続けることが自分の仕事だと信じる。現状に妥協しない、佐藤の揺るぎない姿勢が、現場の人間を奮い立たせる。

写真 佐藤はとにかく熱い


作るんじゃない、醸し出すんだ

 もともと、ビール会社の営業マンだった佐藤。「ブルドーザー」と異名をとるほどの押しの強さで、全国でもトップクラス。しかし、29歳の時、ライバルメーカーの辛口ビールが大ヒット。開拓した取引先は次々と離れていった。やっぱり商品力だと実感した佐藤は、商品開発部門へ異動する。一番現場を知っているのは自分だという自負、強い情熱。しかし、まったく企画は通らない。つらくて、会社に行けなくなった。そんな中、研修に行ったドイツで、現地のビール職人から言われたのが、この言葉。ビール作りの秘けつを言い表した言葉だが、商品開発の仕事そのものへのヒントとなった。そして、現在の佐藤の仕事のスタイル、チームの力で商品を作るようになる。

写真 どん底時代の佐藤


間違ってもいいんだ

 佐藤は部長でもある。商品開発の現場で、部下を育成していかなければならない。今、気にかけているのが、34歳の部下。これまで数々の新商品開発に携わってきた期待の星だが、壁にぶつかっていた。なかなか一人前になっていないと感じていた。優しい性格で、後輩からも頼られる中堅。佐藤も、彼に期待をかけ、新商品のチームリーダーに抜てきした。しかし、なかなか自分を出せずに、チームを引っ張りきれない。そんな悩む部下に、佐藤は心の中で、「間違ってもいいんだ。自信をもって、間違っちゃえよ」とエールを送る。「ウズウズしててもいい。自分を出せ。そうして初めて、つかめるものがある」

写真悩む30代の部下。“壁”を越えさせたい


プロフェッショナルとは…

やっぱり愛情がある人だと思いますね。テクニカルなプロじゃあだめなんですよね。だから、人の気持ちの中に入っていける、その中に入っていける事ができる人ってやっぱりプロ。

佐藤 章

The Professional’s Tools

紙とペン

佐藤は、思いついたら、すぐメンバーに伝える。その伝達法は、そこら辺にある紙を取り出し、黒ペンで、チャート図式を描きながら、話すというもの。外を歩いていて、今の時代のキーワードが心にひっかかるとする。そこから、何か商品を開発したいなと考える。そのアイデアを部下に伝える時、紙に書きながら、話す。話し終わったら、その紙を部下に渡して、開発テーマを作らせる。

写真アイデアをメンバーに伝える紙とペン


商品開発の掟(おきて)14ヶ条

佐藤が、商品開発をする際の心構えを、パワーポイント資料にまとめたもの。社内の部下はみな持っているという。佐藤をヒットメーカーたらしめている秘けつを、14の中から3つほど、今回公開。

消費者が商品を見た瞬間、1発で、あれ、ちょっとウソでしょ、でもおもしろいかも、という快い裏切りが感じられるものが売れる。ぐだぐだ説明して感じるのではなく、一発で、2秒で、というのが熾烈(しれつ)な清涼飲料の世界の掟。
「あの子、好き」という一目ぼれの感覚に近いという。

写真 サプライズ・心地よい驚き


チームやプロジェクトを進めていく時、その商品を一番愛していて、自分の仮説を考えて考えて考えている人が全てを決めていいという掟。横で、そんなに考えていない人が「こっちがいいよ」「こうすべきだ」と言っても、そんなものは聞かなくていい。一番考えている人がこうしたいと思ったら、そこを優先する。会社では、どうしても役割分担があって、味のことは味、名前のことは名前と縦割りだけど、それらを束ねる横軸の人がいて、その人が全部知っているという方が、商品に魂が込められて、お客さんへのアピールも強い。

写真確信犯の一人の開発者が全てを決めていく


かつて、社長が、あるコーヒーを提案してくれたことがあった。しかしその時、佐藤らは、20代の若者に飲んでもらいたいコーヒーを作りたかった。そこで、社長にはっきりとていねいに言った。「社長がおっしゃっているのは社長の価値観。ターゲットが違うので」。そこではイエスマンになってはいけない。そうでないと、失敗した時、他人のせいになすりつけてしまいがち。佐藤自身もそうしたくなることがあるので、自分に対する戒めの気持ちを込めて、この言葉を常に自分に言い聞かせる。

写真会社の都合で商品は作らない


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