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これまでの放送

第2回 2006年1月17日放送

ひたむきに“治す人”をめざせ 小児心臓外科医・佐野俊二


「1%の可能性があれば、それにかける」

 佐野のもとには、他の病院で手術は難しいと言われた子どもたちが全国から集まってくる。その際、佐野は、難しいからといって患者を断ることはしない。もちろん病気の状態によっては、手術ができないこともある。しかし最後の最後まで患者を助ける方法を探り続ける。

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「『仕事』の前に頭をからっぽにする」

 常に極限の重圧にさらされている佐野。多い日には1日5件の手術を行うという。手術という一秒一ミリが命に直結するという現場ではセルフコントロールが不可欠である。
 常に自分をベストの状態にするために、手術が始まる前に、佐野は一つの「儀式」を行う。それは休憩室にこもり一人になること。新聞を読み、コーヒーをすする。手術が難しければ難しい程、佐野はこの「儀式」を徹底させる。何も考えない時間をあえて作ることで、頭をいったんからっぽにして、リセットする。
 そして帽子をかぶり、拡大鏡をつけ、術着を羽織るという一連の準備をするなかで、佐野は一気に集中を高める。

写真手術の合間、休憩室で休む佐野


「腕は修羅場の数で決まる」

 佐野は年間300件を超える手術を行う。日本では群を抜く多さである。他の病院でも請われれば手術を行う。楽をすれば腕が落ちる、だから佐野は手術室に立ち続ける。深夜、容態が急変し、緊急搬送される子どもも少なくない。そんな時、手術が必要であれば、自宅から駆けつけ手術室に臨む。

写真医学部の教授でもある佐野、若い医者を育てることも大切な仕事


「簡単に一人前にさせない」

 佐野は、若い医師に、何年にもわたり、手術をさせない。徹底して下積みを続けさせる。病気の子どもや、家族と日々向き合わせる中で、この仕事の重さを体に刻ませる。技術や知識はもとより、心の準備ができるまで佐野は手術をさせない。
 若い医師たちに休みはほとんどない。手当も少ない。道半ばで多くが挫折する。
 そして佐野は、若い医師に突然、手術を任せる。

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プロフェッショナルとは…

誇りと責任です。誇りをもたないといけない。誇りだけで責任がとれない人はだめです。それをしようと思えば、やっぱり努力しないといけない。

佐野俊二

The Professional’s Tools

ぬいぐるみ

他の病院で、手術をすることも多い佐野。手術道具、拡大鏡、聴診器など、どこでも手術ができるように、自分が使い慣れている道具を常に持ち歩いている。カバンに入っている中で異彩を放つのは、聴診器にぶら下がっている小さなぬいぐるみ。診察の際に、子どもの気を引くためだという。ぬいぐるみは、コアラとカンガルー、そして熊など。子どもが飽きないように、定期的に交換している。子どもが欲しがるとすぐにあげてしまうため、学会などで出かけた先でまとめ買いをするという。

写真聴診器についているぬいぐるみ


拡大鏡

子どもの小さな心臓を扱う佐野、ミリ単位の細い血管を縫い合わせたりするため、手術の際には、拡大鏡は不可欠。佐野が最も多く使うのは倍率、3.5倍。大人のバイパス手術の際には2.5倍を使うという。この拡大鏡、度をぴったりと合わせる必要があり、すべてオーダーメイド、自費で購入する。

写真佐野が愛用する拡大鏡