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これまでの放送

第1回 2006年1月10日放送

“信じる力”が人を動かす 経営者・星野佳路


「残った社員が財産」

 「現場をもっともわかっているのは、これまで働いてきた社員達」―――星野佳路の経営の根幹にある考え方だ。リゾート施設や旅館が行き詰まり、星野が新たに経営に乗り出すとき、そのやり方になじめず辞めるものも当然いる。だからこそ、残った社員は財産。
 客と直接向き合う「現場」に出来うる限り権限を委譲し、「任せる」ことで、肩を落としていた社員のモチベーションをかきたてる。

写真


「社長は偉くない」

 星野の会社の組織はきわめて独創的だ。社長を頂点とするピラミッド型ではなく、いわば「フラット型」。社員を10人程度のユニットに分け、ユニット毎に責任者のディレクターを置く。このディレクターは立候補制で、社員による投票の結果を重視して選ばれる。
 通常の会社では役員会にあたる重要な経営方針決定の会議も、社員に公開され、社員同士の議論で、大事な案件が決められていく。星野は議論のプロセスを見て、きちんとした考え方で議論が進められた上で、社員が決定したことには口をはさまない。ちなみに、星野の会社には「社長室」はない。デスクワークは、休みの社員の机を借りて行う。経営再建の現場で、星野は繰り返し、こう語る。「主人公はあなたたち、社員です」

写真会社組織のイメージ
各ユニットの中心にディレクターがいる


「任せれば、人は楽しみ、動き出す」

 現場のモチベーションを大事にする星野の経営術は、駆け出しの30代で味わったドン底体験から生まれた。軽井沢のしにせ温泉ホテルの長男として生まれた星野は、大学を卒業後、アメリカでホテル経営学を学ぶ。三一歳の時、父の後を継いで、社長となる。一流ホテルを目指して、トップダウンで、アメリカ流の経営手法を持ち込もうとするが、ベテラン社員の反発を招き、100人の社員の三分の一が辞めてしまう事態に陥る。そんななか、収益が落ち込んでいたブライダル部門の責任者にひとりの若手を指名する。結婚式場のカメラマンをやっていた男性だった。
 数ヶ月後、星野は、意外な光景を目にすることになる。仕事を任された若手達は、自分で考え、自分で決めることにだいご味を感じ、目をみはるほど、生き生きと働いていたのだ。
 その姿を見て、星野のなかにある確信が生まれた。「任せれば、人は楽しみ、動き出す」

写真社員の誰もが参加できる経営会議


「コンセプトに正解はない」

 星野は行き詰まったリゾート施設や旅館の再建にあたるとき、徹底したマーケティングリサーチを行い、それをもとに、再生のための「コンセプト」を立てる。どういう人たちをメインターゲットにして、どんなリゾートを目指すのかを明確に示す「道しるべ」である。このコンセプト作りに正解はないと星野は言う。大事なのは「共感」。現場で実際に接客をする社員たちが、共感できるコンセプトを作り上げることが、リゾート再建の鍵だと考えている。星野と社員達が議論を尽くした末にコンセプトが決定すると、今度は、そのコンセプトに沿って、具体的にどんなことをするかを、現場の社員達が考え、実行に移すのだ。

写真そのリゾート独自のコンセプトを立てる


プロフェッショナルとは…

常に完璧を目指そうとしている。完璧になるなんてことはおそらく生涯ありえないけれど、そこを淡々と目指している。

星野佳路

The Professional’s Tools

情報管理ツールとしてのPC・デジカメ

星野佳路は紙の書類を持たない。必要なモノはファイルで受け取り、パソコンに入れて持ち歩く。パソコンに入るものしか情報は持たない。
 例えば、名刺の管理でもPCが大活躍。デジカメで撮影し、ノートPCに取り込む。取り込んだ名刺はグループ毎にフォルダー分けし、ストックしてある。検索をかければ、必要な名刺が瞬時に現れる。長年、名刺の整理に悩んだ末に編み出した星野流の名刺整理法である。

【ポイント!!】
読み込みには、スキャナでなくデジカメを使っている。

写真ノートPCに取り込んだ名刺


星野のビジネスカバン

全国のリゾート地を飛び歩く星野はジュラルミン製で車輪がついたカバンを愛用している。表にはさりげなく子供と撮ったプリクラが。ノートPCはすぐに使えるように、ソフトケースに入れて携帯している。カバンのなかには、風呂敷で包んだ着替え(風呂敷は衣服がばらばらにならないので重宝!)、本などの他に、太陽光で充電する携帯電話の充電器が入っている。飛行機や電車での移動中に、窓際に置き、携帯電話を充電するのだ。以前は、普通の充電器を使っていたが、出張先のホテルにしょっちゅう忘れてくるため、ソーラーエナジーのものに変えたという。これなら、夜、ホテルで取り出すことはないから、忘れることはない。

写真愛用のカバンとノートPC用ソフトケース