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◆低遅延ハイビジョン ワイヤレスカメラを開発
〜ホールからの音楽中継やスポーツ中継に威力を発揮!〜
(平成21年1月30日)
 

○ NHKは、ハイビジョン映像を低遅延で送ることができるワイヤレスカメラを開発しました。

○ ワイヤレスカメラは、ケーブル・レスのため、機動性に優れ効果的な映像を撮影することができます。しかし、従来のワイヤレスカメラ*1)では、遅延が0.5秒程度かかっていました。ワイヤレスカメラや有線カメラを複数台用いる番組では、ケーブルの有無でカメラごとに遅延が異なり、演出上の制約が生じるという問題点がありました。

○ 今回開発したワイヤレスカメラは、ハイビジョン映像を送る無線にミリ波帯*2)を用いることにより、遅延が1映像フレーム(約0.03秒)以下とすることができました*3)。出演者の口元をアップで撮影しても音声とのズレが気になることもなく、有線カメラの映像との切り替えでも違和感を生じないようになります。

○ ミリ波帯の電波は直進性が強く、遮へい物により電波が弱められるため、安定に伝送することが難しく実用化が遅れていました。今回、ワイヤレスカメラからの電波をキャッチする受信機を4台使用してダイバーシティ合成*4)する手法を用いることで、電波が途切れることなく、自由に動きながら撮影することができるようになりました。

○ 昨年末の第59回NHK紅白歌合戦で今回開発したカメラを初めて使用しました。ステージ上の移動撮影などで機動性を発揮し、込み入った場所でもケーブル・レスで動き回れるため、安全面でのメリットも確認しました。

○ NHKでは、視聴者の皆さまに質の高い放送・サービスを届け続けるため、高品質でインパクトのある演出ができるようなシステムの改善、研究開発を推進していきます。

*1) 従来のワイヤレスカメラは、マイクロ波帯(周波数:6〜7GHz)を使用。
*2) ミリ波帯(周波数:42GHzまたは55GHz)はマイクロ波帯よりも周波数が高く、より多くの情報を送ることが可能。
*3) 伝送容量を増やすことができ、低遅延の映像圧縮・伸張装置の使用が可能となった。
*4) 複数の受信機の信号を組み合わせて最大にする合成手法。

(参考)
 映像を撮影するカメラ部、撮影した映像を伝送するための送信部と受信部とから構成しています。


 なお、国内標準規格*4に準拠しており、平成20年12月、国内で初めて携帯局免許の交付を受けています。
*4) 標準規格:社団法人電波産業会の定める標準規格ARIB STD-B43 「テレビジョン放送番組素材伝送用 可搬形ミリ波帯デジタル無線伝送システム」

≪諸元≫  
伝送方式 :1送信・4ダイバーシティ受信OFDM方式(ARIB STD-B43準拠)
伝送レート :80.3Mbps(サブキャリア変調方式16QAM、畳込み符号化率1/2)
映像符号化 :MPEG-2(映像レート70Mbps)
伝送遅延 :1映像フレーム(約33ms)以下
送信周波数 :42GHz帯(41.0GHz〜42.0GHz) チャンネル間隔62.5MHz
占有周波数帯幅 :54.4MHz
送信出力 :100mW
アンテナ :3dBi 水平面無指向性オムニアンテナ(送信)
10dBi 広角ホーンアンテナ(受信)



 
 
 
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