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◆地デジ 離島でも拡大中!
〜UHF帯TTLを利用して離島の中継局を整備〜
(平成20年11月27日)
 

○ 現在、NHKでは、地上デジタル放送の“あまねく”を実現するために、全国の中継局のデジタル化を進めています。既に都市部をカバーする親局や大規模中継局のデジタル化がほぼ完了し、10月末で479局を整備して約95%の世帯をカバーしております。今後さらに放送エリアを拡大するため、残りの期間で1700局を超えるデジタル中継局の整備を進めていきますが、その中には離島や山間部などの地域を含め、中継回線の構築が難しい地域も多く含まれています。

○ このたびNHKは、離島での置局として、UHF帯TTL*1)を利用した鹿児島県奄美諸島の徳之島中継局と沖永良部島の知名中継局を開局しました。

○ 奄美諸島のような離島で地上デジタル放送のネットワークを構築するには、海上を長距離にわたって電波を送る必要があります。徳之島へは奄美大島から55.8km、知名局には徳之島から60.7kmの長距離の電波伝搬となりますが、UHF帯TTLにより安定した回線を構築しました。

○ UHF帯TTLは従来のSHF帯TTLと比較すると、降雨による電波の減衰が小さく長距離伝搬の回線に適しています。しかし、徳之島局、知名局の中継回線は海上の電波伝搬であるため、フェージング*2)とよばれる電波が弱くなる現象は避けられません。

○ そこで、フェージングによる悪影響を改善するため、受信所に2つの受信アンテナを設置して、受信レベルの高いアンテナの信号を優先的に信号合成する最大比合成方式のスペース・ダイバーシティ受信を採用し、中継回線の安定化を図りました。

○ 沖縄県の先島諸島においても、UHF帯TTLの中継回線を利用した中継局の整備を進めています。

○ 今後、離島や山間部などを含めたデジタル中継局の整備を進め、地上デジタル放送のエリア拡大と電波の安定送出を図っていきます。

*1) UHF帯TTL(Transmitter to Transmitter Link:放送プログラムを送信所から送信所へ送るための回線)は四方を海に囲まれた離島への長距離海上伝搬において、安定した放送番組の中継回線を構築することを主目的として2008年3月に制度化された。
*2) 気象の影響を受け、電波が強くなったり弱くなったりすること。特に海や湖の上を伝搬する際に発生しやすい。

図1 鹿児島県奄美諸島のNHK中継局ネットワーク



図2 鹿児島奄美のデジタル放送のUHF帯TTL回線の系統図




図3 知名中継局の写真




図4 知名中継局の鉄塔図面

<参考:従来の中継方法>
UHF帯TTLは、離島への長距離海上伝搬回線を安定して中継することを目的として制度化された中継回線手法の一つです。従来アナログ放送では、離島の中継局への中継はエリア向けのVHFの放送波を直接受信する放送波中継、もしくはUHF帯よりも高い周波数帯であるSHF帯によるTTL中継の2つがありました。放送波中継はエリア向けにサービスしているため、中継局へつなぐことを主眼においておらず、弱い電波を受信せざるを得ない状況が少なくありませんでした。また、SHF帯による中継は、UHF帯よりも周波数が高いことからフェージングや降雨の影響を受けやすく、長距離海上伝搬回線には適していませんでした。これに対してUHF帯TTLはSHF帯よりもフェージングや降雨に強く、受信側の中継局へ送信することを目的としているため、回線に適した条件で送信することが可能なため、長距離海上伝搬回線でも安定した回線構築が可能となります。


図5 UHF帯TTLとSHF帯TTL、放送波中継との比較

<参考:最大比合成方式のスペース・ダイバーシティ受信>
スペース・ダイバーシィティ受信は、2つの受信アンテナのうち受信電力の大きい方の受信に切り替える選択方式と、2つの受信アンテナの信号を合成する等利得合成方式および最大比合成方式の3種類の方式があります。等利得合成方式は2つの信号を同相で合成することにより受信信号の品質を改善する方式です。また、最大比合成方式は2つの信号のうちSN比の良い(品質の良い)方の信号に重みづけをして信号合成することにより合成後のSN比が最大となるように受信信号の品質を改善する方式です。最大比合成方式は、等利得合成方式や選択方式にくらべ最も優れたダイバーシティ受信方式です。徳之島中継局と知名中継局では、UHF帯TTL回線のさらなる安定化のために、NHKが開発した最大比合成方式のダイバーシティ受信装置を使用しました。


 
 
 
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