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◆地上デジタル小規模中継局用の出力合成型
アンテナ共用器(隣接共用可能)を開発
〜中継装置の省スペース化、低廉化に寄与〜
(平成20年6月27日)

○ NHKは、複数の放送事業者のチャンネルが隣合わせで使われる地上デジタル小規模中継局において、電波を合成して一つのアンテナで送信するための小型低廉な出力合成型アンテナ共用器を日本電業工作(株)の協力を得て開発しました。

○ NHKと民間放送事業者は、地上デジタル放送のサービスエリアを効率的に拡大するため、中継局の共同建設を推進しています。小規模中継局では一般的に、複数の放送事業者の電波を統合して、一つのアンテナで送信(あるいは受信)しており、そのためアンテナ共用器が必要です。

○ アンテナ共用器には、これを接続することでおきる損失が少なく、また他のチャンネルに妨害を与えない特性が求められます。しかし、これまで多く用いられてきたアンテナ共用器では、共用するチャンネル数が多くなると、装置が大型化し、かつ高価になるという課題がありました。

○ 今回開発したアンテナ共用器では、一端終端型フィルタと呼ばれる設計法※1を使用することにより、地上デジタル送信設備共通仕様書(オレンジブック)で規定されたアンテナ共用器の伝送特性を確保するとともに、従来型に比べて大幅な小型化(隣接4チャンネル共用時にオレンジブック規定の最大寸法の半分以下)を実現しました。

○ この共用器を適用することにより、地上デジタル小規模中継局の機器全体の省スペース化、低廉化が可能となり、地上デジタル放送の全国展開に向けた効率的な整備が期待されます。

○ NHKは今後、開発した出力合成型アンテナ共用器の実用化に向けたフィールド検証を進めるとともに、デジタル中継局のより効率的な整備を目指し、アンテナ設備をはじめとしたデジタル送信・受信機器の研究・開発に取り組んでいきます。

※1 一端終端型フィルタ:衛星などこれまで高い周波数のフィルタで使用されてきた方式で、各チャンネル用フィルタの出力を分配器を使用せずに直接合成できる特徴を持っている。

【補足説明】
○ アンテナ共用器では、CIB型と呼ばれる方式がこれまで多く用いられてきました。この方式では、異なるチャンネルを足し合わせていくために、図1Aの様に分配器(HYBで表記)2個とフィルタ(BPFで表記)2個を組み合わせて使っています。この構成単位をチャンネル数に応じて順番に継ぎ足していくために、装置が大型化し、高価になるという課題がありました。

○ しかし、図1Bの様に各チャンネルに対して1個のフィルタを通すだけで直接合成できる出力合成型を用いれば、上記の課題を解決することができます。



○ 今回開発したアンテナ共用器では、隣り合うチャンネルに妨害を与えないようにするため、必要なチャンネルの信号だけを通し、その隣のチャンネルでは急激に信号を通さない特性を持つ有極型フィルタ※2と呼ばれるものを用いております。

○ 通常のフィルタ設計法では、複数個のフィルタを接続するとフィルタ間に相互干渉が起こって所望の性能確保が困難ですが、一端終端型フィルタと呼ばれる設計法を使用することで、隣合わせのチャンネルで各チャンネルの出力を直接合成しても各々のフィルタのもつ特性を確保できるようになりました。

※2 有極型フィルタ:目的とするチャンネルの帯域外に振幅が大きく減衰するポイント(減衰極)を設けることで、急峻な遮断特性を実現するフィルタ。




 
 
 
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