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◆地上デジタル中継局用の回りこみ抑制システムを開発
〜全国ネットワーク構築の効率化・低廉化を実現〜
(平成19年6月4日)


○ NHKは、日立電線(株)と共同で地上デジタル放送のSFN(単一周波数ネットワーク)中継局1)の送受信アンテナ間で発生する回りこみを効率的に抑制する遮蔽システムを開発しました。開発したシステムは、同一鉄塔に送受信アンテナを配置するSFN小規模中継局などで大きな威力を発揮し、今後の全国地上デジタル放送ネットワーク整備の低廉化が期待できます。

○ 地上デジタル放送では、周波数を有効利用するため同一の周波数でネットワークを構成するSFN中継局を多数整備する予定です。SFN中継では上位の中継局からの受信周波数と放送波の送信周波数が同じため、送信アンテナから発射された電波の一部が受信アンテナに回り込み、音響のハウリング2)に似た発振現象が発生するおそれがあります。これを避けるためには、受信アンテナを送信アンテナから遠ざけて別の鉄塔に設置(送受分離方式)したり、回りこみキャンセラー3)など電気的な信号処理により発振を抑制する必要がありました。

○ 今回開発したシステムは、回り込みを抑制するため送受信アンテナの間に遮蔽板を設置しています。このような遮蔽板は、送信アンテナから受信アンテナに直接届く電波は遮蔽できますが、遮蔽板の外周がアンテナのような特性を持ち、そこから再放射される電波によって十分な遮蔽効果が得られない場合があります。このため、十分な効果を得るには、外周に電波吸収体を取り付けたり、非常に大きな遮蔽板を用いるなどの工夫が必要でした。

○ 開発したシステムでは、遮蔽板の外周と送信アンテナの指向性パターンの電界が最小の方向(ヌル方向)が一致するようにその大きさと設置位置を最適化しています。これにより遮蔽板から再放射される電波の強さを抑制することができ、小さな遮蔽板でも大きな遮蔽効果を可能としました。

○ このシステムを利用することによりマイクロ波による中継方式やSFNの送受分離方式に比べ大幅な整備経費の低廉化が期待でき、地上デジタル放送ネットワークの効率的な整備が可能です。今後は、実用化に向けてフィールド試験を行っていく予定です。

1)SFN:Single Frequency Network
2)スピーカーから出た音をマイクロホンが再び取り込んで発振する現象
3)「地上デジタル放送用回り込みキャンセラーの開発」平成12年4月27日発表



図1 SFN中継局の電波の回りこみと遮蔽板設置による抑制


図2 遮蔽板設置による回り込み抑制効果
(シミュレーション)


[写真] 開発した回り込み遮蔽システム



 
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