◆ハイビジョンOFDM伝送 4系統ダイバシティ受信装置を開発
〜 マラソン中継のより安定した映像伝送が可能に 〜
(平成17年1月13日)
○ NHKは池上通信機(株)と共同で、マラソンなど移動中継に使用しているハイビジョンOFDM伝送装置の受信性能を向上した、4系統ダイバシティ受信装置を開発しました。ダイバシティ受信とは、建物の遮蔽や反射により発生する受信電力の低下や電波の干渉を補うために、位置の異なる複数のアンテナを使用して電波を受信する方式です。昨年12月の「第16回女子全国高校駅伝、第55回男子全国高校駅伝」で、今回開発した装置を移動中継車に搭載して使用し、ランナーに並走するオートバイからのハイビジョン映像の生中継に初めて成功しました。
○ OFDM伝送方式は、フェージング
*1
やビル街などで発生するマルチパスに強く、これまでも、マラソンなど移動中継に多く使用されてきました。しかし、建物の遮蔽などにより見通し外になると、受信できない場合がありました。
○ 今回、開発した4系統ダイバシティ受信装置は、4台の受信高周波部と1台の受信制御部で構成しています。高周波部で受信する4つのOFDM信号それぞれについて、フェージングおよび雑音による信号の劣化状況に適応し、受信制御部で最適な比率で合成処理を施し復調します。このため見通し外になった場合でも、従来のOFDM受信機に比べ、格段に良好な映像を視聴者の皆様にお届けできるようになりました。
○ 開発した装置は、「第23回全国女子駅伝」(平成17年1月16日放送)、「第10回全国都道府県対抗男子駅伝」(平成17年1月23日放送)、「第60回びわ湖毎日マラソン」(平成17年3月6日放送)のハイビジョン中継にも使用する予定です。NHKは今後も、ハイビジョンによる取材や中継で、より安定した映像・音声を伝送するため、さまざまな機器の研究・開発に取り組んでいきます。
※1フェージング:
無線伝送において、送信点から受信点までの間に、反射などによる複数の伝搬経路がある場合、無線局の移動や時間経過に伴って、これらの距離の差に応じた位相差が生じ、受信レベルの強弱が生じること。
[4系統ダイバシティ受信装置の中継システムとシステム構成]
[4系統ダイバシティ受信装置外観]
ダイバシティ受信高周波部
受信制御部
1号移動中継車の受信アンテナ
単車1号と1号移動中継車
[諸元]
受信制御部
受信高周波部
大きさ
483W×88H×500D(mm)
100W×60H×150D(mm)
重量
約11kg
約1kg
消費電力
300W 以下
15W 以下
復調方式
QAM
*1
-OFDM
*2
(ARIB STD-B33準拠)
使用受信
周波数
6972MHz、7026MHz、7044MHz
※1 QAM方式:
直交振幅変調方式(Quadrature Amplitude Modulation)で、長距離のデジタルマイクロ信号伝送に広く使われる方式。周波数を効率的に運用できる。
※2 OFDM方式:
直交周波数分割多重方式(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)で、地上デジタル放送に用いられるなど、ゴーストや移動伝送に強い広帯域伝送用多重方式。