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NHKと富士通が
「地上デジタルテレビジョン波監視用LSI」の共同開発に着手
(平成14年12月16日)


 NHKと富士通は、富士通および富士通研究所が開発した復調LSI(大規模集積回路)に、放送所から放送局や中継機、放送エリアへの電波が正常に受信されているかどうか(復調信号の誤り率の測定など)を常時監視する電波監視機能を1チップに搭載した「地上デジタルテレビジョン波監視用復調LSI」の共同開発に着手しました。

 本LSIにより、低価格で信頼性の高い電波監視装置の開発が可能となります。電波監視装置が常に電波を監視することにより、視聴者は、きれいな画像や音声でテレビ番組を楽しめるようになります。
 これにより、地上デジタル放送の普及に大きく貢献するものと期待されます。

 地上デジタル放送は、移動中の車中やビル影など、受信条件の悪い場所でも映像・音声、データ放送が楽しめる21世紀の新しい放送形態として、大きな期待が寄せられています。2003年末までに東京、大阪、名古屋地区での放送開始、2006年には全国的な放送を目指して準備を進めています。

 地上デジタル放送は、衛星放送と異なり、ビルや山などの障害物による反射のために、電波が複数の経路から時間の遅れを伴って受信機に到達するマルチパスの影響が問題になります。今回開発するLSIは、マルチパスの影響を受けにくいOFDM(*1)と呼ばれる多数の搬送波を用いたマルチキャリア方式を採用しています。

 今回開発するLSIは、汎用の地上デジタル放送受信機にも十分対応できる仕様です。サンプル品は、2003年6月頃に完成する予定です。


【開発するLSIの主な仕様】
AC(*2)復調機能
放送所から放送局や中継機、放送エリアへの電波復調信号、TMCC信号(*3)、コンスタレーション(*4)、緊急警報信号(*5)などが出力可能。

【用語説明】
*1: OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)
多数の搬送波を用いるマルチキャリア・デジタル変調方式。一定の帯域幅における搬送波の配置密度を最も高めて、1搬送波当たりの伝送レートを低くすることでデータ間隔を長くし、マルチパス妨害の影響を避けることが可能です。
*2: AC (Auxiliary Channel)
変調波の伝送制御に関する付加情報です。
*3: TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)信号
伝送多重制御信号。これは、デジタル放送では、1チャンネル内に携帯向けサービス、残りのチャンネルを固定受信向けサービスというように複数のサービスを階層的に同時に放送できます(階層伝送)。その各階層の伝送パラメータを指定するものです。
*4: コンスタレーション
受信した電波を復調した際に、X-Y平面にマッピングされた各シンボルデータのことで、その配置により受信状況を把握できます。
*5: 地震等の緊急時に放送局から受信機に伝送する信号です。











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