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平成24年度入局式 松本会長講話 要旨
 

 入局おめでとう。心から歓迎する。今日から皆さんも公共放送NHKの一員。希望に燃え、高い志を持って今日この日を迎えたことと思う。次の時代を担う若い力を迎えることを喜んでいる。

 皆さんが今後、公共放送、NHKで仕事をしていく中で大事にしていただきたい基本姿勢について話をしたい。NHKでは多くの人がいろいろな職場でさまざまな業務を行っている。一人ひとりが「公共放送NHKの原点」にある理念を共有し、その理念・価値観に基づいて行動することが大切だ。
 NHKの原点、すなわち理念は、依って立つ放送法にある。その趣旨は、「放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらす」、「不偏不党、真実及び自律を保障することによって、表現の自由を確保する」、「健全な民主主義の発達に資する」。これらは放送法第1条の規定。そして、放送法第15条にはNHK設立の目的が示されている。「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように、豊かで、かつ良い放送を行う」、「放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行う」。そして、わが国を代表する放送機関として「国際放送を行う」。さらに、取材・制作の基本的な姿勢として、正確、公平・公正、人権の尊重、そして国民の生命・財産を守るといったことが示されている。スタートにあたり、こうした公共放送NHKの原点・理念・価値観をしっかり認識してほしい。

 NHKの仕事は視聴者の皆さまからお支払いいただく受信料で成り立っている。視聴者の皆さまからの期待は、皆さんが考えている以上に大きい。「豊かで良い放送を届けてくれる」、「確かな情報、豊かな知識を与えてくれて、役に立つ」、「安心・安全を守ってくれる。NHKの放送を見れば、聴けば、自分たちの行動の指針となる」そうしたNHKであってほしいという期待を持っている。その気持ちが受信料を気持ちよく払ってもらえるか、そうでないかまったく違う形になる。視聴者の皆さまがどういう気持ちで払っていただくのかということは、私たちの仕事のやり方によって変わる。これからNHK人として、公共放送であるからこそできること、あるいはやらなくてはならないことがあるということを肝に銘じてほしい。

 決して忘れてはならないのは、発生から1年となった東日本大震災。この1年間、NHKは持てる力を最大限に発揮し、公共放送として震災報道に全力、心血を注いできた。
 地震が発生した3月11日午後2時46分、NHKは緊急地震速報から直ちにテレビとラジオ、すべてのチャンネルを震災報道に切り替えた。
 その裏では、日常の訓練通り、皆さんの先輩である全職員が一斉に動き出していた。その後27日間にわたり、24時間の報道体制を敷いた。
 野村総合研究所が行ったアンケート調査では、震災報道で重視したメディアとしてNHKを挙げた人は8割を超えていた。NHKが圧倒的に信頼を勝ち得ることができたのは、普段から積み重ねてきた緊急災害報道に対する準備と訓練の上に、職員が一丸となって、こういう時こそ人々の役に立たなくてはならないと、公共放送の使命達成のために立ち上がったからだ。このNHKの放送は、日本国内はもとより、世界各国の放送界からも高い評価を得ている。
 言うまでもなく、震災の復興に向けて課題は山積している。NHKは、被災者の方々の思いに寄り添い、震災を検証し、復興に向けた支援を放送を通じて行っていかなければならない。皆さんも、深い自覚をもって頑張ってほしい。

 今年度は新たに策定した3か年経営計画スタートの年。この経営計画は、日本が先を見通せない状況にある中で公共放送として精一杯努力していきたいという思いを基本方針として、「信頼される公共放送として、放送機能の強化と放送サービスのさらなる充実を図り、豊かで安心できる社会の実現と新しい時代の文化の創造に貢献します」と謳っている。この基本方針のもと、キーワードとして、「公共」、「信頼」、「創造・未来」、「改革・活力」の「4つの重点目標」を掲げている。
 受信料については、視聴者の皆さまへの還元ということで今年10月より値下げをする。これはNHKの歴史の中で事実上初めてのこととなる。この計画を推進していく中で厳しい要素もあるが、これを乗り越えていくことがNHKの組織、職員の力をより強くしていくと確信している。
 新しい経営計画では、基本姿勢として、公共放送の原点に立ち返り、組織全体が一貫して「総合力」を発揮していく、そしてその私たちの仕事を視聴者の皆さまから評価していただき、それを踏まえ、さらにレベルアップしていく。皆さんも、計画に書かれている事柄をしっかりと認識して、私たちと一緒にこれからのNHKを作り上げてほしい。

 未来に夢をはせる一方で、NHKで働く者として強く自覚してほしいことは、「公共放送で働く者には、高い倫理観と厳しい行動規範が求められる」ということ。日常の仕事ではもちろんのこと、私的な場面においても、社会的責任を持って自己を厳しく律しながら行動してほしい。
 NHKの最大の財産は「人」。人の能力、発想力、分析力、取材力、そういうものがNHKらしい、質の高い放送を生み出している。皆さんも、その一員となり、すぐれた放送・サービスを生み出していってほしい。同時に、常に「広い視野」を持つ努力を続けてほしい。大事な財産なので、私たちは皆さんをしっかり、そして、厳しく育てる。皆さんも全てを貪欲に吸収し、大きく成長してほしい。

 今後、NHKをめぐる環境はますます劇的に変化していくと思う。しかし、環境がどのように変わっていこうとも、視聴者ニーズを的確に捉え、質の高いニュース・番組を作り、送り届けるということが使命。常に公共放送の原点に立って、NHKの責任と役割を果たし、自信と誇りを持って、NHK人生を過ごしてもらいたい。

 
 
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